「たびレジ」の長所
前回の記事では
1)日本政府外務省が提供する外務省海外安全ホームページ
と2)世界各地の大使館等在外公館から配信される「たびレジ」登録者向けのメールサービス
の二つをご紹介しました。
皆さんもご理解されているとおり、自分たちが特定のサイト(URL)を訪問しなければ情報の更新を確認できない1)ホームページに比べて、2)のメールサービスは速報性の面では圧倒的に優れています。また、全世界の情報が一律に掲載されるのではなく
自分が滞在している国、
旅行を計画中の国、
ご家族や友人が旅行している国、
新規の海外展開を検討している国、
といった必要な国の情報だけを入手できるのも「たびレジ」の長所です。
「たびレジ」で配信される情報
それでは、具体的にどういう情報が配信されてくるのか確認してみましょう。一つ目の事例は当時日本でも大きく話題になった香港での大規模な民衆デモへの注意喚起です。
具体的にいつ、どこでデモが計画されているか、デモが予定されている日にどう行動すればよいか、明確に記載されているのがわかります。
このメールでここまで具体的な情報を配信できるのは東京からではなく、現地香港の担当者の方が情報収集し、配信しているからこそ。香港はショッピングやグルメ、近郊マカオへの観光等、日本人にとっても手近な海外旅行先ですので旅行客の方も多いはず。
もし「たびレジ」登録が済んでいなければ、何も知らず香港市内に観光に行って、理由はよくわからないけれども群衆に囲まれてしまい
身動きが取れない!
観光どころじゃない!
群衆に囲まれて怖い思いをした!
なんてことになりかねません。
二つ目の事例は少し古いメールですが、サウジアラビアに隣国イエメンから飛来したミサイルの情報です。
こちらは事前の予告などなしに飛来したため、ミサイルが迎撃された後の発信となっています。日本政府外務省、大使館と言えども、隣国武装勢力の動きを詳細に把握することは不可能ですので、これは致し方ないですね。
他方で、メール文面には、
被害があれば大使館に迷わず連絡してください、
大使館の連絡先はここですよ、
今後ミサイルが発射された場合はこうしてください、
とこちらも日本人向けの具体的なアドバイスが端的に記載されており、大変参考になりますね。
ちなみに、このメールそのものはかなり古いですが。2019年~2021年まで、サウジアラビア国内各地にイエメンからとミサイル類がたびたび飛来しています。そのたびに在サウジアラビア日本国大使館はしっかりと「たびレジ」登録者に対して情報提供しています。
また、2022年2月末にはロシアによるウクライナ侵攻対応で様々な情報発信が行われていました。ウクライナから隣国ポーランドへ避難する日本人の方への案内や、避難を希望される方の窓口事務所の設置など、かなりきめ細やかな「邦人保護」対応を行っています。
例えば以下3月1日のメールを読んでいただけると「他人事」ではないリアリティのある状況が伝わってくるのではないでしょうか?日本国民の保護が業務の一つとなっている日本国大使館とはいえ、実際にかなり丁寧な邦人保護業務が行われていることがわかるのではないかと思います。原資は皆さんが納める税金です。「各種公的サービスが活用できることを知らずに損しないように!」という金融/経済系のコラムも多く存在しますが、これもまた同じ。海外にいらっしゃる際には海外安全ホームページはもちろん、この「たびレジ」を無料で使わないのは損ですよ!
さらに「たびレジ」ではデモやテロ事件、凶悪犯罪、武力紛争など以外にも大規模な地震や火山の噴火、流行性の疾病情報、現地滞在中の衛生管理に関する対応アドバイス等も配信されます。
日常生活を送る上で役に立つ情報も配信されています
海外での日常生活を送る上で役に立つ情報とはどういうものでしょうか?例えば、在パキスタン大使館から配信されたダニや蚊といった虫対策メール。
実際に現地で暮らす日本人の皆さんからの体験談なども交え、具体的なアドバイス付きで情報が配信されていますね。慣れない旅行先であれば特に「たびレジ」は心強い味方になります。
加えて、「たびレジ」に登録すると、定期的に当該国の犯罪発生状況や、日本人の方が被害にあった事件の概要等も情報共有されてきます。
「海外進出先の候補地をいくつか比較したい」
という場合は候補国を「たびレジ」上で簡易登録し、大使館から直接配信される治安情報を見比べれば進出計画に大変参考になると思います。
「たびレジ」の弱点と言えば・・・
ただし、「たびレジ」も万能ではありません。ホームページに比べれば速報性が高いですが、事件後すぐに情報が発信されないこともあります。おそらくは大使館内でメールを送信してよいか、意思決定するまでに多少の時間が必要なのでは?と想像しています。また、アメリカやイギリス等、他の政府が発信した情報の一部は「たびレジ」でカバーされないことがあります。これはあくまで当HPの推測ではありますが、特に、日本からの観光客が多い地域や、駐在している日本人が多い地域の場合、
「あまり不安を煽りすぎないように」、
という配慮があるのか他国が配信する注意喚起のニュアンスよりも緩やかな表現で情報発信しているケースも散見されます。
このため、「たびレジ」だけを頼りにしていると
実は配信されない重要な情報を知りえなかった
他国はもっと強い警報を発していたのに気づかなかった
という状況にもなりかねません。
当HPでは日本政府外務省の情報も踏まえながら、他国の外務省に相当する政府情報発信や最新ニュースを踏まえ、実際に役に立つ現地情報を提供しています。日本政府の情報を補足する、もしくはスクリーニングする意味で「海外安全.jp」のサービスもご活用いただければと思います。
「海外安全.jp」のサービス
このコラムを含む「海外安全.jp」のウェブサイト、SNSアカウント等では、中立的な立場から世界各地の治安情報を収集し、日本人の皆様に向けて日本語で
1)各種緊急事態の速報
2)各国が発信する自国民向け注意喚起
3)当HP独自の治安動向の予測
といった情報を日々無料で提供しています。
日本政府が配信した情報のうち、特に重要と思われる注意喚起はもちろんのこと、日本政府が発信しない情報でも、
外国の政府が発信した警告情報
海外メディアの報道内容
SNS上のテロ予告(特に信ぴょう性の高いもの)
などを選別してお届けています。
渡航する国、関心のある国の「たびレジ」登録と併せて「海外安全.jp」の無料情報配信も活用いただければ幸いです。
『海外安全.jp』Xアカウント
また、企業・団体・学校等の実務担当者のお役に立てるように、ということで年に10回ほど、無料のオンラインセミナーを開催しています。こちらではより具体的な安全対策の実務、最新の世界情勢解説などを当サイト代表の尾崎が直接解説しています。こちらもお時間ご都合つくようでしたらぜひご覧くださいませ。
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