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NHKラジオ番組で代表が解説! 海外での写真撮影とSNS利用に関するトラブル回避術

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外務省が「写真撮影とSNS投稿」に特化した注意喚起を出した理由

近年、海外での写真撮影やSNS投稿をめぐるトラブルが、各国の治安当局による取り調べや拘束に発展する事例が目立つようになりました。日本政府外務省は日本人を含む外国人観光客の写真撮影やSNS投稿に関連したトラブルが増えてきていることを踏まえ、2026年6月3日「海外における写真・動画撮影及びSNS等への投稿に関する注意喚起」を公開しています。類似の注意喚起は実は20年以上前から行われていましたが、なぜ今改めて日本人の旅行者に向けた注意喚起がなされるのか、NHKのラジオ番組で特集されています。ご縁があり、当サイト代表の尾崎がラジオの生放送番組「Nらじ」で解説させていただきましたので、今回のコラムはラジオ番組の特集の概要と番組内で語り切れなかった注意事項をコラムにまとめました

(7月22日までNHKラジオ「聞き逃し配信」で尾崎が担当した約10分の特集コーナーがお聞きいただけます)

 

大前提として、この数年写真撮影や動画撮影に用いられる器具が小型化し、一般の方にも簡単に買えるようになったという事情があります。また、少し前までは特殊な業務用を除きほとんど普及していなかった撮影用ドローンも家電量販店で当たり前のように販売されるようになっています。こうした機材を持って海外に渡航する方が増えているため、当然関連のトラブルも増えるというシンプルな相関関係がある点はわかっていただけるのではないでしょうか。

 

海外での写真撮影は、長らく「個人的な旅の記録」であり、SNS投稿は「思い出の共有」でした。しかし2020年代後半に入り、世界はこの行為をまったく別の角度から見るようになりました。外務省が今回、写真撮影とSNS投稿に特化した注意喚起を出した背景には、国際環境の変化と情報技術の進化が複雑に絡み合っています。世界が情報のあり方・公開のされ方に敏感になった結果、旅行者の行動が国際情勢に接続してしまう時代になったという構造変化の話です。

 

まず、世界の安全保障環境が大きく変わりました。紛争や緊張が広範囲に及び、観光地のすぐ近くまで軍事的影響が及ぶ国が増えています。かつては「軍事施設だけが撮影禁止」だった国でも、今は橋・鉄道・港湾・空港・宗教施設など、広範囲のインフラに至るまで安全保障上の重要情報として扱われています。理由は単純で、写真一枚が軍事・治安情報として利用され得る時代になったからです。さらに、SNSとAIの存在がこの流れを加速させました。SNSは「個人の記録」ではなく「世界全体への公開情報発信」であり、AIは膨大な画像を解析し、軍事・治安情報として再利用できます。つまり、一般旅行者が何気なく撮った写真が、国家レベルの情報として扱われる可能性があるのです。これは旅行者の意図とは無関係です。

 

こうした変化を踏まえると、外務省の注意喚起は「撮影禁止の対象が増えた」という単純な話ではありません。むしろ、世界が情報に敏感になり、旅行者の行動が安全保障の文脈に巻き込まれやすくなったという構造的な変化への対応です。つまり、今回の注意喚起は日本人旅行者の行動を制限する目的で発せられたわけではなく、『世界の情報環境が変わったことを理解してほしい』 というメッセージなのです。

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急増する日本人の撮影関連トラブル

では、実際に日本人旅行者の間で何が起きているのでしょうか。ここ数年、写真撮影やドローン利用をめぐるトラブルが急増しています。特徴的なのは、「悪意がない」「ただの趣味」という前提で行動した結果、重大な違反とみなされる」という構造です。これは誤解ではなく、文化的・情報的なズレから生まれています。

 

日本人は「写真=記録」「SNS=共有」という文化を持っています。旅先で鉄道や橋を撮ることは珍しくありませんし、ドローン撮影は「美しい景色を残すための手段」として扱われます。しかし世界では、写真は「情報」、SNSは「拡散」、ドローンは「監視・偵察の可能性がある機材」として扱われます。この文化差がトラブルの温床になっています。

 

象徴的なのが、ベラルーシでの日本人拘束事案です。現地に長く住んでいた日本人が、鉄道の写真を大量に撮影していたとして拘束され、約1年5か月にわたり身柄を拘束されました(無事に解放されています)。本人は趣味の撮影だったとしても、情勢が緊迫する国では「軍事輸送の可視化」とみなされる可能性があります。鉄道や橋は軍事物資の輸送ルートであり、兵士の配置や警備態勢が写れば、攻撃側に弱点を示すことにもなりかねません。

 

西アフリカのブルキナファソでは、無許可でドローンを飛ばした日本人が拘束されました。この事例は日本政府外務省が公開している安全対策基礎データにも明記されています。国によってはドローンの持ち込みそのものを許可制にしていたり、一切禁止にしていたり、と厳しい規制が設定されていることもありますので十分にご注意下さい。上空からの撮影は軍事施設や重要インフラを容易に捉えるため、各国が神経質になるのは当然です。

ここで重要なのは、撮影者に悪意やスパイ行為の意図があるかどうかではなく「その国の政府から見て(他国に知られたくない)情報を記録したかどうか」で判断されるという点です。

日本人旅行者は旅行の記録という前提で写真や動画の撮影をすることがほとんどです。しかし各国の治安当局は、旅行者の意図とは無関係に、周辺国や外国人に知られてよい情報かそうでないか、という点に判断基準があります。つまり、この数年観察されている写真撮影やSNS投稿を巡るトラブル件数の増加は誤解ではなく構造的なズレから生まれているとも言えます。自分たちの価値基準、判断基準が世界共通だ、と考えている限り同じトラブルは繰り返されます。 だからこそ、旅行者は「日本の常識」を一度手放し、世界の情報環境の中で自分の行動がどう見られるかを意識する必要があります。

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トラブルを未然に防ぐ心構えと行動の工夫

では、海外旅行に行く日本人の皆様は何に気をつければよいのでしょうか。どんな行動上の工夫をすればトラブルを回避できるのでしょうか?

 

結論から言えば、最も重要なのは、 「渡航先の撮影ルールと情勢を事前に調べること」 です。外務省の海外安全ホームページでは、国別の撮影禁止情報や治安情勢が掲載されています。現地の日本大使館のホームページや公開されている「安全の手引き」にも、撮影禁止区域やSNS投稿に関する注意喚起が出ていることがあります。

在トルコ日本国大使館作成の「安全の手引き」。写真撮影に注意!という見出しが設定されている

 

さらに、現地メディアや国際ニュースを確認することで、「いまその国が何に敏感になっているか」を把握できます。例えば戦争の当事国であれば当然軍事的な動きを察知されかねない写真の撮影は許容できません。また反政府デモが大規模化しかねない場合には、群衆の撮影が認められない場合もあります。反体制派が多数集まっている写真は政権の求心力に陰りが出ている証拠とも言えますし、より大勢が集まっているなら自分もデモに参加しよう、と考える人が増えかねないためです。(しばしば反体制デモが活発化した際に現地でインターネットが遮断されたり、SNS利用が禁止されるのも同じ理由です)

 

ただし、ここで難しいのは、「絶対に大丈夫というラインが設定されているわけではない」 という点です。撮影禁止のラインは、国際情勢や外交関係によって日々変化します。昨日は問題にならなかった行為が、今日の情勢悪化で摘発対象になることもあります。だからこそ、最新の情報を自分で確認することが不可欠です。

【参考コラム】情報収集とスパイ行為を線引きする3つの要素(写真・情報源・行動範囲)

 

また、戦争やデモとは無関係に宗教施設や宗教行事の撮影は、文化的に認められないというケースも少なくありません。例えばイスラム圏では、女性の撮影が家族の強い反発を招き、警察沙汰になることもあります。「撮っていいですか」「どの角度なら問題ありませんか」と一言確認するだけで、トラブルを大きく減らすことができます。

 

海外での安全は、「日本の常識のまま行動しないこと」 が最大のポイントです。トラブルが増えているから海外に行くのをやめよう、とまで考える必要はありません。むしろ大多数の方は日本政府外務省が注意喚起するようなケースに遭遇せず無事に帰国されているはずです。それでもせっかく海外に行くなら避けられるトラブルは避けていただきたい、というのが当サイトの願い。例えば以下のような二つはどんな方でも心がけ一つで実行可能な行動上の工夫です。

 

1)海外にいらっしゃる前には必ずご自身で現地情勢を予習してください。現地の情勢を踏まえた行動の工夫が、トラブルを未然に防ぎ、旅の自由度を守る最も確実な方法です。例えば当サイトの国別ページ(「各国最新治安情報」ページ)にはその時点での日本・アメリカ・イギリス・オーストラリア4か国の政府が自国民向けに発表しているトラベルアドバイスが日本語でまとまっています。最低限このページを見ていただくだけでも十分な予習になりますので、ぜひご活用下さい。

 

2)写真を撮影する場合には一瞬でよいので、滞在先の国や被写体から見て撮影してよいと言えるかどうかを想像してみてください。観光地で類似の写真がガイドブックやほかの旅行者のSNS等に掲載されているような場合はほとんどの場合問題ありません。他方で、日本の常識では問題にならない場合でもその国の事情ー特に戦争や大規模デモ、宗教行事等ーを踏まえた時に判断しかねる場合にはすぐに撮影するのではなく周囲の方やガイドさんに「撮影してもいいですか?」と確認する癖をつけてみてください。

 

この二つ、実行するのにお金はかかりません。最小限のコストで皆さんの安全が確保されるとすれば、知っておいて損はないと思いますよ。

 この項終わり