日本企業の海外展開は当然の流れ
日々ビジネスの世界で奮闘されている皆さんにとって市場の成長性は大変重要なポイントではないでしょうか?今期よりも来期、さらにその次と利益を伸ばしていくことが資金調達においても、従業員雇用においても大切だからです。
市場の成長性を考える際の基礎はそこにニーズがどのくらいあるか、ではないでしょうか?自社が提供する製品もしくはサービスをどのくらいの規模の人が求めているの か。その規模が大きければ大きいほど市場全体の成長潜在性があるわけですから、人口が増える市場、それも若い人が増える市場が最も魅力的である、という点は異論がないと思います。
その観点では、日本の人口見通しはビジネスにとって必ずしも好ましいものではありません。総人口も若年人口も減少するのですから、日本国内だけを相手にするビジネスはどうしても先細り傾向になってしまいます。
こういった統計を見ていても、日本企業が今後利益を上げ続けるために海外に進出することは不可避と思います。少なくとも高成長を目指すのであればいまだ人口が増えている、それも若年層が増えているアジアや中東、アフリカに進出するという選択肢が視野に入ってくるのではないでしょうか?
例え新型コロナウイルス感染症のような世界的なリスクが明白になったとしても、成長を追い求めるのであれば世界に討ってでなければならない、というのは日本を拠点とする企業・団体の共通の課題なのだと思います。
海外展開する日本企業がやらなければならないこと
さて、海外に展開した場合、日本国内での常識が通用しないことがままあります。
そもそもその国の人口はどのくらいなのか?人口の成長率はどうか?若年人口は増えているか?といったことは基本中の基本。現地の気候や風習なども踏まえて潜在的なビジネス可能性を推し量ることが第一歩となると思います。
また、経済的な観点ではその国の一人当たりGDPや国全体の財政状況、なども確認されるはずです。
法律的にも、外資規制がないか、外貨持ち出しの制約がないか、現地従業員を雇用する際の労働法はどうなっているのか?なども気になるポイントでしょうか。
こうした「情報収集」は海外展開において絶対に欠かせません。進出候補先の国で御社の製品やサービスが売れるのか?安定的に経営を続けられるのかの検討なしに海外進出はされないはず。海外進出の前に「情報収集」は絶対にやならければならないのです。
そんなことは当たり前だろう、と言われそうです。経営者の皆さんからすれば、現地のビジネス環境、経済状況、法制度、などの「情報収集」は海外進出の是非を判断する時点で十分できている、とおっしゃるかもしれませんね。ただ、上記の情報収集では不十分な点があるとしたらどうでしょうか?実は世界環境の変化によって、必要な「情報収集」の範囲は広がってきているのです。
特に昨今、世界中にテロや襲撃の脅威が広がるようになっています。これまで、進出前に「情報収集」が必要ではなかった治安、安全対策用の情報収集も事前にしっかりやらなければならないのは間違いありません。ただ、いかんせんこれまでそういったジャンルの情報を海外展開前後に収集してきた企業、担当者が少ないというのが現実です。つまり、現地に派遣された駐在員や出張者の命を守るための治安や安全対策に関連する情報をどのようにあつめればよいのか?自信を持って取り組めている企業、人はごくわずか、というのが実態です。
では、治安、安全対策関連の情報収集はどのようにやればよいのでしょうか?
治安、安全対策用の情報収集とスパイ活動は違う
後編では、具体的な治安、安全対策関連の情報収集方法をご紹介したいと思います。が、その前に、どうしてもお伝えしておかなければならないことが一つあります。
それは日本人の「情報収集」、それも治安や安全対策分野の情報収集に対するイメージを取り払ってください、ということ。既にお伝えした通り、これまで日本企業や日本人は治安や安全対策関連の情報収集への取り組みが後回しになっていました。そのため、こうした分野の「情報収集」は日常とかけ離れたフィクションの世界のイメージが先行してしまっています。
(なお、日本企業や日本人が治安、安全対策用の情報収集経験が少ないのは日本国内の治安が極めて良いこと、またあえて危険を冒さなくとも稼ぐ力があったことを示しています。日本企業や日本人が至らないことを示すものではないのです。ただし、世界情勢の変化(テロや襲撃の増加)、世界経済のグローバル化、日本国内の人口減など様々な要因が相まって、これから同分野の情報収集ノウハウを官民問わず積み重ねなければいけません)
例えばこんな感じで・・・。
ジェームズ・ボンドやイーサン・ハント、最近ではジェイソン・ボーンなど数々のスパイヒーローが小説や映画で大活躍しています。彼らは秘密道具を使ってみたり、超人的な格闘で殺害をも辞さない敵と戦ったり、と格好いいことは間違いありません。彼らも治安や安全に関わる「情報収集」をしているため、ついつい小説や映画のイメージに引きずられますが、これは情報=intelligence (インテリジェンス:諜報情報)の世界の話です。これまで治安や安全に関わる「情報収集」をした経験が少ない日本人にとっては、こういった「作られたイメージ」にどうしても引きずられてしまうのですね。
情報収集の具体的な方法に進む前に絶対に理解しておいていただきたいことがあります。
それは、通常海外でビジネス展開を図る場合に必要なのは情報=information(インフォメーション:公開情報や伝聞情報)のみであるということ。例えば地元の英字新聞で報じられるニュースであったり、現地従業員からの政治情勢に対する意見など、自然体で入手できる情報だけを集めるようにしましょう。くれぐれも海外でスパイ活動(及びその容疑をかけられるような情報収集)をするのはやめましょう。
最近ニュースにもなりましたが、北朝鮮内で軍事施設の写真を撮ったと疑われた日本国籍の男性はスパイ容疑で拘束されています。万が一御社の関係者がスパイ容疑で拘束されてしまった場合にはビジネスどころではありません。また、スパイと認定された場合は最悪の場合、現地当局によって処刑されることだってありえるのです。
地元の有力者とのコネができるとビジネスの上でも情報収集の観点からも有利ではありますが、治安や安全対策関連の情報をもらうために、不必要に軍や警察組織に近づいたり、お金を払ったりするという行為はやってはいけない、ということを覚えておいてください。
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