治安情報収集はスパイではない(後編)

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時系列で情報を整理することに価値がある

手間を極力省きつつ、治安・安全対策に関連する情報を整理するにはどうしたらよいのでしょうか?

 

少し古いですが、かつて当サイト代表の尾崎がパキスタンに駐在していた際、日課として取り組んでいた「パキスタン主要事件簿」のごく一部を抜粋してお見せします。

 

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見ていただければわかる通り、何の変哲もない、ワードファイルです。書かれている項目も日付と事件の概要だけ。しかも長文で詳細に事件を記載するわけでもなく、背景を推測するわけでもなく、淡々と事実だけが書いてあります。情報源の大半は地元の英字新聞。

海外進出された先でも、たいてい地元の新聞は購読されているでしょうから、毎朝、ざっと新聞を眺めて治安や安全対策に関連しそうなニュースがあれば記録するという作業だけでもやってみてください。たいていの国では報道されるような事件数もそれほど多くないでしょうから、一日10分~15分もあれば記事の要約は完了するはず。場合によっては何日も書くことがない(新聞の斜め読みだけで完了)、ということだってあるかもしれません。

そう、時系列で、自分たちの組織に関係しそうな治安事案情報を、新聞等で確認し、記録することが安全管理の実務上非常に役に立つのです。

 

 

えっ!?それだけ?

騙されたと感じられるかもしれませんが、こういった「誰もが入手できる」情報を淡々と記録し続けることが、自分たちの身に危険が迫っているか、考えるヒントになるのです。

例えば、

 

 外国人が狙われている事件が増えていないか?

 凶悪犯罪の発生地域がだんだんと広がっていないか?

 これまで事件を起こしてこなかったグループが急に活動を活発化させていないか?

 

など丁寧に記録を残しておけば日々の変化が目で見てよくわかるようになります。記録を残さなければ単なる印象論で終わってしまいますが、時系列で主要な事件記録を残しておけば、関係する方々の間で、現地治安リスクの共通認識が持てます。また、具体的にどのような事件が増えているのか、どんな過激思想が広がっているのか、がわかると講じるべき対策も明確になりますね。

 

くどいようですが、こうした公開情報を丁寧に積み重ねることが将来的な大きな差(場合によっては人命を失うかもしれません)につながります。毎日10分程度でいいのです。映画のような諜報活動も必要ありません。今すぐ取り組んでいただける作業のはずですので、ぜひトライしてみてください。

 

【次ページでは・・・情報をどう整理すればよいかわからない、といった時にお使いいただけるフォーマットをご紹介】