【事案分析】ケニアホテル襲撃テロ事案

 

トップ画像はホテル入り口での爆発に伴う火災の状況(英BBCのHPが掲載した動画よりキャプチャ)

事案の概要

〇 2019年1月15日現地午後3時頃ケニア首都ウエストランド地区の高級ホテル/ビジネスコンプレックスであるDusit D2ナイロビに対し、爆発と銃撃による複合テロ攻撃が発生

〇実行犯らはまずホテル入り口の駐車場に手りゅう弾を投げ込んだ上で、警備員を射殺。ロビーに侵入後一人が自爆した模様。

〇テロ攻撃により少なくとも21名が死亡し、約30名が負傷。

〇事件発生直後にソマリアを拠点とするイスラム教過激派組織アルシャバーブが犯行声明を発表。犯行声明によれば、今回のテロはエルサレムの「ユダヤ化」に対する反撃としている。

〇死亡者の中はアメリカ人、イギリス人、ケニア人と報じられている。

〇犯行グループは少なくとも4名(6名だったとの報道あり)でライフル等により十分に武装している様子が監視カメラ映像に残されている。

英BBCホームページの動画よりキャプチャ

〇現地治安当局は事件直後にホテル敷地内に突入し、700名以上の民間人を救出するとともに、実行犯を制圧。同日23時頃までには安全が確保された旨発表。

〇しかしながら16日未明から早朝にかけて周辺地域で再度銃撃戦が発生し治安当局が制圧するため周辺に警戒線が敷かれた。

〇テロの標的となったデュシットD2ホテルはタイ資本で現地では外国人らが集まる場所だった。また日本を含む複数の外国企業が入居するビジネスコンプレックスも併設されていた。

〇在ケニア日本国大使館によれば同ビジネスコンプレックスに入居していた三井物産等日本企業の駐在員らは全員無事だったとのこと。

 

 

 

簡易な分析コメント

〇本事案はケニア首都でも再開発が進み、外国人が多く暮らす地区でイスラム教過激派と思われる集団が実行し、大きな被害が発生したテロ事案です

〇犯行声明を発表したアルシャバーブはソマリアを拠点とするスンニ派過激派組織であり、アルカイダとの関連が強いとされています。(公安調査庁「国際テロ組織」より)

〇監視カメラで記録されている実行犯らは十分な武器、弾薬を所有しており、またホテル侵入にあたって迷いがほとんどありません。洗練された計画を踏まえ、下見を重ねた上でテロ実行に至ったものと思われます。

〇アルシャバーブは過去ケニア国内で以下のようなテロに対し犯行声明を発表しています。ケニア軍がソマリア国内に駐留しており、敵対している関係からケニアがたびたび標的になっていると考えられます。

2013年 ナイロビ市内ウエストゲイトモールへの襲撃テロ(67名死亡)

2014年 ナイロビに向かう長距離バスをハイジャックし、非イスラム教徒のケニア人28名を殺害

2015年 東部ガリッサ市内ガリッサ大学への襲撃事案(147名死亡)

 

〇特に今回の事案は2013年ウエストゲイトモールへの襲撃テロ事件現場と位置が近く、また外国人や裕福なケニア人が集まる場所という点で共通点があります。

MSNBCの動画HPより

 

〇さらに今回の事案は2013年に発生したナイロビ市内ウエストゲイトモールのテロに関与したとされる人物4名に対する判決が出た直後でした

〇今回の事案に対しアルシャバーブはトランプ大統領によるエルサレムの首都認定など、エルサレムの「ユダヤ化(Judaized)」への反撃である旨声明を発表していますが、ウエストゲイトモール襲撃テロ事件への判決に対するケニア当局への反撃も兼ねた攻撃であったとも解釈できます

〇他方で、判決からわずか数日で計画できるとは考えにくいほど規模の大きなテロ事件といえます。事前に十分準備をした上で、実行日を判決の直後に設定した可能性も考えられます

〇なお、本事案が発生する前、昨年10月下旬にケニア中心部でアルシャバーブによるテロの可能性がある旨記載された現地治安当局の内部文書が公開される事件がありました。直後に当局はこの文書は「フェイク」である旨発表し、テロの脅威を否定していました

〇当局の文書が「フェイク」であったかどうかを確かめる術がありません。他方で、昨年10月末時点でナイロビ市内でのテロ実行計画があったものの、治安当局が計画をかぎつけ警備を強化したため、アルシャバーブが一旦計画を中断、その後警戒が緩み始めたタイミング、かつウエストゲイトモール襲撃テロ関係者への判決が出たタイミングで外国人の集まる場所へのテロを決行した、というシナリオも想定できる状況です