「何を守るか」明確にすれば迷わない

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安全対策の原点は「何をどこまで守るか」

イラクやイランの場合は早い段階で日本政府外務省はもちろん、イギリスやオーストラリア政府も自国民に対し退避を推奨しました。在イラク日本国大使館がイラク国内に滞在している日本人に退避を呼びかけた上に、バグダッドの大使館を一時閉館すると正式に発表しています。このためイラクやイランに駐在者ががいる日本の企業は比較的早く両国からの避難を決断できたようです。

 

 

個人的には香港と違い、一時期は「すわ戦争か」という状況にまで至りましたので、迅速な判断は賢明だと思っています。ただし、香港同様後から振り返ってみると現在イランとアメリカの対立は小康状態になっており、ミサイルが継続的に飛び交う、主要都市で戦闘行為が発生するというほどの状況ではありません。事態の推移をすべて知っている人間から見れば避難しなかったとしても直接的に日本人が死傷する事態にはなっていなかったかもしれません。

 

避難したほうがいいと言ってみたり、避難しなくてもよいと言ってみたり、何を言いたいのか?との指摘をいただくかもしれません。が、これはあえてわかりにくい文章を書いているのです。そう、尾崎から皆さんに問いかけたいのは、

 

「皆さんはどんな事態が発生したら特定の国・地域から避難するという判断をすべきと考えますか?」

 

という質問です。基準があれば迷わないのですが、皆さんはいかがでしょうか?

 

 

海外で安全対策を講じるのは、守りたい何かがあるはずだからです。守るべきものを守るためにできる限りの対策を講じることが基本中の基本。自分の命、家族の命、従業員の命はもちろん大切です。それに加え、海外で保有している金銭や事業用の資産、事務所等の拠点を物理的に守ることも大切でしょう。とはいえ、何のリスクも取らずに安全だけ確保していれば海外での事業展開を実現することも難しいのです。

 

尾崎自身は安全確保と事業の継続性、その優先順位を明確にすることが安全対策の原点だと考えています。香港やイラン/イラクの場合は、事業の継続と駐在員や家族の滞在継続、どちらが大切かをはっきり決められるかどうかが判断のポイントだったと言えるでしょう。もし、香港では今情勢が収まりつつありますが、今後避難要否検討が必要なタイミングがくるかもしれません。この場合は何を守るべきなのか、を各社・団体ではっきりさせていただくことが重要だとおもいます。

具体的には

 

 事業継続の重要さよりも駐在者に対するリスクが高まった状態とはどういう状況か?

 現地事業継続のために、全駐在者が現地にいる必要があるのか?

 駐在者が家族と一緒に暮らす意味と(事業継続だけを考えれば)non-essentialなご家族の滞在リスクどちらが重たいのか?

 

といったポイントを考えていただくとよいのではないでしょうか?

ただ、手をこまねいている(検討中のまま時間が過ぎていく)ことはコーポレートガバナンスの観点からはよろしくありません。避難するなら避難する、こういう状態になったら避難を指示する、といった判断基準を明確にしていただくことが今求められているのではないか、と感じています。

 

この項終わり