2022年北朝鮮からのミサイル発射数急増
昨年2022年は北朝鮮からのミサイル発射回数、発射数ともに急増しました。一年間で発射回数はなんと37回(月に3回のペース)、合計99発のミサイルが発射されたとされています。2022年の12月31日及び2023年の1月1日にも二日連続でミサイル発射が確認されており、今後も日本周辺や日本上空を通過するミサイルの発射が懸念されています。
こうした事態に備え、日本政府は国民保護のために様々なツールを用いて緊急時の対応を啓もう・周知してきています。例えば、最も簡単な啓発ステッカーは3ポイントに絞って、緊急回避行動を案内しています。
1)屋外にいる場合は近くの建物か地下に避難
2)(屋外にいて近くに)建物がない場合は(コンクリート構造物等の)物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る
3)屋内にいる場合は窓から離れるか、窓のない部屋に移動する
海外でのテロ対策などをやっている身からしても、確かにこの三点を知っているだけで生存確率は変わるだろうな、という内容です。これだけで十分というわけではないですが、何も知らないよりはまずこの三点、と評価できる内容です。
このほかにも「国民保護ポータルサイト」等日本国に向けたミサイル攻撃や大規模なテロ等が発生した際の安全確保策がまとめられたページがあります。日本政府の公式情報となりますので、一度は読んで頂くことをおススメします。
【参考】内閣官房国民保護ポータルサイト
2017年グアムへのミサイル脅迫時の米国グアム政府推奨事項
さて、では日本政府の公式な国民保護情報だけでなく、もう少し本格的に戦争状態に巻き込まれた際の対応を調べたい場合はどうすればいいでしょうか?日本は幸いにして過去約80年間にわたって領土・領空で武力衝突が起こってこなかった土地柄です。当然ながら第二次世界大戦当時に生きていた方も数少なくなっており、「戦地」での経験を語れる方となると本当にわずかとなっています。ですので、上記に例示した国民保護ポータルだって、日本政府による公式のものではありますが実際の戦争、武力衝突を経験していない人間が書いていることになりますね。
他方、世界最大の軍事力を誇る国、それも2001年9.11事案で疑似的な「本土攻撃」をつい20年前に経験したアメリカ政府の対応は参考になると思いませんか?実は2017年北朝鮮とアメリカの対立が先鋭化したことがありました。この時はなんと今日本周辺にミサイルを発射している北朝鮮が「グアムにミサイル攻撃をする」と脅迫するまで事態がエスカレートしました。当時核兵器を搭載したミサイルの標的として名指しされたグアム政府(アメリカの準州政府)が発表した緊急事態発生時のガイドラインは非常によくまとまっており、日本でミサイルの脅威に備える際も役立つと考えます。日本国内での治安維持や安全対策は普段当サイトの守備範囲外としていますが、海外での安全対策事例として、ぜひご紹介したいと思います。
北朝鮮からの距離の関係上、ミサイル発射の警報を受けて国民が対応できることが少ないのは事実。北朝鮮が本気で日本の国土に対するミサイル攻撃を行った場合、おそらく警報から10分もしないうちに日本のどこかにミサイルが着弾するこおともあり得ます。他方で、太平洋に浮かぶグアムまでミサイル攻撃を行う場合、最短でもミサイル発射から着弾まで40分程度はかかります。この点で、グアムの人たちのほうが警報を受けてからできることが多いのは事実。その分、日本政府以上にグアム政府の緊急事態ガイドラインはよりきめ細やかな記載がなされている印象です。
現在は公式なグアム政府国土保安局のページに掲載されていませんが、2017年当時緊急時の行動指針はA4二枚にまとめられ、周知されていました。
1)事前の「非常持ち出し袋」の準備をしておくこと
2)ミサイルが発射されたら冷静に政府発表を聞き、避難所(シェルター)等への避難指示に従うこと
3)近くのコンクリート製建物等への避難も有効であること
4)もしミサイル着弾時に外にいた場合には爆発の方向を見ないこと
5)子供の通う学校に個別で連絡しないこと(学校は安全基準に基づく設計・施工がされている点明記)
グアム政府が推奨していた緊急事態発生時「非常持ち出し袋」の中身
当時グアム政府はミサイル攻撃があった際、こういう物資を「非常持ち出し袋」「生活物資保管箱」に入れておくとよいですよ、という別表を用意していました。こちらもミサイル攻撃を想定した備えとして日本人の方にも有用かもしれません。
グアムと日本では生活環境が多少異なりますが、万が一ミサイルが落ちてきた場合や自然災害発生時等大規模なライフラインの寸断といった事態にも役に立つものです。北朝鮮からのミサイル攻撃脅迫があった直後、当サイトで日本の事情に合わせた翻訳を行った記録がありましたので改めてご紹介します。
国土の広いアメリカということで、大きなボックスに収納する、大型車に積んでおくという想定で記載されている印象もあり、すべてを日本でそろえる必要はないかもしれません。ただし、記載内容としてはミサイル攻撃を受けて各種インフラが破壊された後1週間~10日生き延びるために必要な物資が整理されていますので大変参考になります。
1.常時携帯すべきもの
・携帯電話と充電器
・家族の連絡先、避難&集合計画
・手回しラジオもしくは電池式ラジオ
・保険証のコピー
・薬の処方箋のコピー
・家族の医療記録(母子手帳やお薬手帳等)
・その他重要な書類
・トランシーバー
2.絶対に必要な物資
・現金
・救急セット
・服用している薬
・一人当たり約4リットルの水
・7日分の食料(缶詰、野菜、肉等)
・缶切り
・懐中電灯と電池
・ろうそくとマッチ
・レンチとペンチ
・毛布
・日焼け止め、虫よけ
・ビニール袋、ガムテープ
・予備のメガネもしくはコンタクトレンズ
・非常用の呼子笛
3.場合によって必要な物資
・ポータブルのガスコンロ
・紙製のコップ、お皿
・使い捨ての食器類
(弊社追記:ラップ類も便利です)
・ウェットティッシュ
・着替え
・雨具
・丈夫な靴
・子供が安心できるもの(ぬいぐるみや毛布)
・ペットとその動物に必要な物資
現在公式に公開されている「非常持ち出し袋」(Supply Kit)のリストはこちらから閲覧できます。
その他、現在のグアム政府の住民保護についてはグアム政府の国土保安局ホームページで直接ご確認ください。
グアム政府が用意したQ&Aで重要な項目を抜き出し!
Q:緊急時用のグッズセットは何に保管する?
Q:物資セットはどこに保管する?
Q:緊急時用のグッズセットは複数必要?
A:人数に合わせてセットを作りましょう。キットは自宅に一つ、車の中に一つ、仕事場に一つ、と置いてもよいでしょう。
Q:グッズセットは何日分が目安?
Q:予備で持っておくとよいものは?
いかがでしたでしょうか?日本周辺での有事も想定しうる2023年年初、改めて皆さんとご家族・ご親族の安全確保にお役に立てていれば光栄です。
この項終わり