安全対策は随時見直すもの

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安全対策は「現地の治安情勢」によって変わる

このコラムの読者皆様は世界各地でご活躍されている方のはずです。一言で「海外」と言いますが、それぞれの国や地域での治安情勢、政治情勢はさまざまです。当然日本人がその地で活動する際のリスクやリスク要因もばらばらでしょう。必要な安全対策は皆さんが活動される「現地の治安情勢」に即したものであるべきです。

 

前々回前回の二回コラムで、現地のリスクが下がったと思われる際、どのように安全対策措置を緩和するか理論と実践をお伝えしてきました。ただし、こうした安全対策の緩和や反対にリスクが高まった際の安全対策強化はごくまれに行うものではないのです。

 

非常に危険な地域に行くにも関わらず、日本や比較的治安が安定している国向けの安全対策しか講じていなければ十分な安全対策とは言えません。

他方で、それほど危険度が高い地域ではなく、一般犯罪や交通事故の備えが重要であるにも関わらず、防弾車を何台も用意したり、武装した警備員を集団で雇用するのは予算がもったいないだけでなく、現地で「何をそんなに守っているのか?」とあらぬ疑いをかけられる恐れもあります。

 

登山などでもこれは同じでしょう。

 

エベレストに登るのであれば、エベレスト用の装備、パーティーが必要です。

富士山に登るのであれば、富士山用の装備や届け出、連絡体制が必要です。

関東の高尾山や関西の六甲山、札幌なら藻岩山のような山に登るのであれば、少し丈夫な靴と多少の厚着でよいでしょう。

 

この組み合わせが違ってくるとどうなるでしょうか?

エベレスト用の装備、パーティーで富士山に登るのは非常に不自然でしょう。しかし、反対に高尾山や六甲山に登る程度の格好でエベレストに挑むのは自殺行為です。

 

同じように、海外での安全対策は「現地の治安情勢」に応じた適切なレベルを設定することが重要なのです。現地の治安情勢によって適切な安全対策のレベルが変わるということは、常に現地の治安情勢の動向を確認しておく必要があるということを意味します。

 

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「現地の治安情勢」が変われば必要な安全対策も変わる

前のページでは必要な安全対策のレベルを山の環境と装備、バックアップ体制になぞらえました。しかしながら、登山と安全管理では決定的に異なる点があります。それは万が一への備えを考える際の「前提条件」がガラッと変わってしまうことがあるということ。

通常登山の難易度は山によってほぼ固定されています。天気の良しあしや冬山などの季節的な難しさ、といった変動要因はあるものの、その変動要因は織り込めるはずです。山自体が大きく動かない以上、備えておかなければいけないリスク(天候リスク、滑落リスク、迷うリスク等)はほとんど変わりません。

 

しかしながら、海外における安全対策の場合は、国内の情勢が大きく変わり、「前提条件」がそれまでと全く変わってしまう、ということもしばしば。例えば、

 

 政治情勢の急変に伴い、与野党の支持者同士が衝突する

 国際的なテロ集団が国内での活動を活発化させ始める

 経済状況の悪化に伴い、一般犯罪が急増し始める

 

といった変化があれば、当然安全対策のレベルも変えなければいけません。

 

イメージとしては次の図のようになります。同じ国・地域であっても治安情勢に変化があり、対象国の脅威度(赤い丸)が大きくなったのであれば、許容できるリスクまでの差である「必要な安全対策」(青い矢印)を大きく・太くする必要があるのです。

 

各国の注意喚起、犯罪統計などの変化にはアンテナを

海外での安全対策措置を設定するにあたって

 

海外での安全対策は対象となる国・地域の治安情勢に沿ったものとすること

国・地域の治安情勢は時々刻々変わりうるものであること

 

をご理解いただけたのではないかと思います。

このコラム最後のテーマはどのようにして「前提条件」の変化を把握すればよいのか、というものです。

 

世界各地でご活躍されている皆さんにとっては、たとえ日ごろ生活していたり、現地の方とやりとりしている国・地域でも、治安に関連するニュースすべてに目を通すことはほぼ不可能でしょう。(日本国内の治安情報を把握することすら難しいです)

しかしながら、治安情勢の変化は捉えたい。捉えなければいけない。

そのために活用できるツールとしてここでは2つご紹介します。

一つは日本政府外務省が提供している「たびレジ」サービス。日本にいる方も海外にいらっしゃる方も活用可能で、指定した国の最新治安情報がメールで流れてきます。例えば直近首都バンコクで政治的な緊張が高まっているタイから流れてきたのは以下のような情報。

 

bangkok-political-alert
日本政府外務省によるバンコクでの政治集会に関する注意喚起

 

 政治情勢の急変に伴い、与野党の支持者同士が衝突する

 

に近い状況が継続しています。(タイの場合、現時点では治安当局と反政府抗議デモ参加者の衝突が発生していますが、2008~09年には与野党の支持者同士の衝突も発生しました)

 

 

もう一つのツールはWorld Terrorism Indexアメリカ国務省発表のテロ発生レポートと言った定期的に発表される治安事件の統計です。こちらは、年に一度の公表が多いですが、例えばWorld Terrorism Indexは毎年11月ごろ、国務省のレポートは毎年9月ごろの発表と、タイミングが概ね決まっています。

 

毎日の治安情勢確認は難しくとも、

 

年に数回信頼のおける治安事件数統計が発表されることを知っておく、

「要約」と主要なグラフを眺める癖をつける、

 

の二つを実践するだけでも、安全対策見直しが必要かどうか、判断しやすくなるのではないでしょうか?

 

 

当サイト代表の尾崎が毎月一回をめどに実施している無料の安全対策セミナーでも最新の治安情勢トレンドを概説させていただいております。公開されている各種情報源の使い方などもご説明しますので企業・団体様の安全対策をご担当されているかたは無料セミナーへの参加をご検討ください。お申し込みはコチラからどうぞ。

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