受け入れ可能なリスクの設定は経営判断の一つ

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旅行でも海外事業展開でも必ずリスクは残る

前回の記事で、海外における犯罪やテロ・襲撃等事件に巻き込まれる可能性をゼロにしたければ、海外に行かずに閉じこもることになります、と記載しました。

 

どんなに安全だと思われている国でも、周りの様子をよく知っており、言葉も通じる日本の生活圏より安全、ということはほぼありえません。つまり、旅行であれ、企業の海外事業化都度であれ、何らかの活動を行う以上は普段よりもリスクの高い環境に自分の身を置くということになるのです。

 

ただ、リスクがあるから、旅行も海外事業展開もしない、と割り切れませんよね。

旅行に行けば、見たこともないような景色、食べたことのない食べもの、予想もしていなかった現地の習慣、新しい人との出会い、などなど無数の刺激が得られます。

また、日本国内の市場が縮小する中で、海外でのビジネスを拡大したい、コスト削減もしくは為替変動への耐性向上のため海外での生産を加速しなければならない、といった事情で海外展開が必須の場合もあるでしょう。

 

旅行であれ、海外展開であれ、「リスク以上のメリット」が得られるのであれば、是非海外に行くべきだと考えます。リスクがゼロにならないからメリットがあってもみすみす見逃す、というのは弊社としても推奨しかねる選択です。

 

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自分が受け入れられるリスクはどこまで?

 

では、ゼロにはならないリスクをそのまま受け入れるか、と言われればそれはNOでしょう。あくまで、メリットよりもリスクが小さいと感じられる時に行動すべきであって、どうせリスクがあるんだから、とりあえず海外に行ってしまえ!となるのは賢明とはいえません。

これは投資判断におけるIRR(内部収益率)や新規事業の撤退判断基準作りと似ています。初期投資や運用コストに対してより大きな利益が得られるのであれば、初期投資がゼロでなくても当然投資すべきです。ただし、実際に事業を始めてみて、当初想定した以上にリスクが大きく、事業がうまくいかない場合は、何らかの対応策を講じるか、撤退することになりますよね。

 

先ほど「リスク以上のメリット」と「」付きで書きました。この意味は海外におけるリスクは相応の対策を講じることで、コントロールしうる、つまり「リスク」のレベルは常に一定ではなく、対策次第で変動させることができるからです。ここまでリスクを下げられるのであればメリットを追求するために受け入れられる状況だ、となれば、積極的に海外に飛び出す価値があるのではないでしょうか?

つまり、想定されるメリットよりも旅行先や進出先での治安面、政情不安のリスクを抑えられるのであれば、現地に行ってみる価値がある、ということです。

 

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想定しうる脅威を受け入れ可能なレベルのリスクに

具体的に図を見ながら考えてみましょう。

 

 

各国によって、政治的な安定度、テロの発生件数や銃の流通数、治安当局の能力から、万が一の際の脱出態勢等、安全対策に関する条件は異なります。そのため、日本人が外国に行く際の潜在的な脅威レベル(赤い円)はまちまちです。

ただし、皆さんが受け入れられるリスク(青い円:安全対策を経てリスクをコントロールした後の状態)はどんな国に行く場合でもほとんど同じはず。(危ない国に行くときには死んでも仕方がない、とはさすがに思われないでしょう)ここまでリスクが抑えられるなら、メリットを取りに行こう!という判断する基準になる円の大きさですね。

 

それぞれの国の脅威と受け入れられるリスクの間を埋めるのが、必要な安全対策(青い↓)です。図の一部として示した通り、太く長い矢印が必要な国(イラク・アフガニスタン)であれば、できるだけ強固かつ複数の安全対策を講じて現地入りしなければ受け入れられるリスクまで抑えられません。他方で、安全な国=細く短い矢印しかない国(中国・韓国・カナダ・ドイツ・フィジー等)であれば、必要最小限の安全対策で現地活動が可能になります。

 

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なぜ、自分(自社)で安全対策を考えるのか?

弊社では、海外で日本人が活動する際、安全対策の観点を無意識的に取り入れられる方を増やしたいと考えています。スローガンとしては「海外での安全対策を組織文化に!」を掲げています。安全対策なんてコストなんだからアウトソースでいいのではないか?とお考えでしょうか?

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なぜ、安全対策を皆さん一人一人の行動様式に標準装備しなければならないのか?

なぜ、外部への委託(丸投げ)ではなく自社内に関係者の安全管理機能をもたなければならないのか?

 

それは、何らかのリスクを負って活動する人・組織がどこまでなら『究極の安全対策』から妥協して、リスクを受け入れられるかを考える必要があるからです。上述したように、受け入れられるリスクは個人によって、また各社によって、そしてその時その時の背景によって異なります。得られるメリットの大きさをどう評価するのか、またどこまでリスクをとれるのか、は投資案件同様千差万別、バリエーションも無限です。

 

同じ国でも

・危ないから行かないほうがいい

と思う人もいれば、

・得られるものが多いので、安全対策をしっかりやって行こう!

・競合他社との競争を避けるには多少のリスクを取らなければならない!

と思う方もおられるに違いありません。

 

我々のような安全対策コンサルタントは現地の脅威レベルや効果的な安全対策を複数提示することは可能です。が、最終的にどこまでリスクが取れるか、どんなメリットを取りに行くのか、を決めるのは現地入りされる皆さんです。

 

 

ぜひとも海外で活躍される皆さんにはご自身で、自分にとってこの国で必要な安全対策はなんだろうか?ということを考える癖をつけていただければと思っています。今回のコラムがその一助になっていれば光栄です。

 

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