防弾車は「逃げる時間を稼ぐ」ためのもの
例えば、移動中に銃で襲われても、運転手、乗員が死傷しないように作られている防弾車という製品があります。通常は一般的に販売されている車両に金属板や強化ガラスを追加で装備し、簡単に銃弾が貫通しないように加工して納品されるものです。非常に重厚で、見るからに丈夫そうなので、乗っているとそう簡単に危険な目にあわないな、という安心感があります。
しかしながら、こういった防弾車、備え付けられた鉄板や強化ガラスが壊れるほどの威力で攻撃された場合には中にいる人たちも死傷することになります。どれだけグレードが高くても強力な爆発物や地雷による被害を受ければ車体が損傷してしまいますし、(防弾車のグレードにもよりますが)1発、2発の銃弾は防げたとしても、全く同じ個所に威力のある銃弾が次々と命中した場合には、いずれかの時点でプレートやガラスが割れて内部まで銃弾が貫通してしまうのです。
このため、防弾車に乗っていれば大丈夫、と考えて、いざというとき内部に籠って待機する、というのは危険な対応です。むしろ、防弾車が銃撃を防ぐ能力を維持している間に、できる限り銃撃現場から遠ざかるように、緊急時には猛スピードで逃走する必要があるのです。このためには運転手も乗員も銃撃された際を想定してある程度訓練を積んでおかねばなりません。
つまり防弾車は内部にいれば安全になる代物ではなく、逃げるための時間を少しでも稼ぐための車両、と認識しておく必要があります。もし、適切な使い方ができないのであれば防弾車は高価で重たい車でしかありません。
(ほぼすべての防弾車には空気が入っている通常のタイヤではなく、ゴムだけでできた「ランフラットタイヤ」が装備されています。このため、万が一銃弾がタイヤに命中しても、パンクすることなく数十キロは走れるよう設計されています。)
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