GW直後の印パ対立、その時弊社/顧客はどう動いた

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インド/パキスタン進出企業に激震が走った一週間を振り返る

5月7日現地未明(日本時間で7日朝6時前)インド軍はパキスタン国内の9か所に対する空爆やミサイル攻撃を実行しました。これは4月22日インドが支配するカシミール地方に位置する観光地パハルガムで発生したテロに対し、パキスタンの国家的関与が疑われることから反撃を行ったものと説明されています。
攻撃が行われたのは、インドとパキスタンの間で領有権の係争が発生しているカシミール地方(パキスタン支配地域)にとどまらず、国際的にもパキスタン領と認識されているパンジャブ州内ラホールやシアルコット(世界のサッカーボール生産の中心地)も含まれていました。パキスタンを率いるシャリフ首相は攻撃を受けた後の反撃に言及したことおあり、日本の連休明け初日(5月7日)からすわ印パ間の全面戦争か!という空気が広がったのも事実です。
パキスタンに駐在者・出張者を派遣していた企業はもちろんのこと、インドに駐在者・出張者を派遣している多くの企業では緊張感が急激に高まったのではないでしょうか?当社にもインド駐在者を避難させるべきか?来週のパキスタン出張は予定通り派遣できるのか?(両国のすぐ東側に位置する)バングラデシュへの影響はあるか?といった様々な問い合わせが急激に増えたという経緯がありました。年間通じての情報提供・アドバイザリ契約をいただいているお客様はもちろんのこと、過去受注をいただいたことのないメールマガジン会員の方からもお問い合わせがありましたので、その関心の高さを痛感しました。
現時点では印パ間の緊張は高い状態ながらも小康状態を保っており、一安心している方お多いかもしれません。今回は特別に5月上旬からインド・パキスタンに関係者を派遣されている企業、拠点をお持ちの企業にどのようなアドバイスをお送りしたのか、そして弊社顧客が具体的にどのように動かれたのかを可能な範囲でご説明したいと思います。

 

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5月2日時点での弊社アドバイスと顧客の動き

実際には、4月30日の時点でパキスタンの外務大臣が「36時間以内にインド軍がパキスタンを攻撃するという情報を得た」との報道があったのですが、この時点では弊社情報網では攻撃計画の信憑性が確認されていませんでした。実際にパキスタンの外務大臣が目安としていた36時間以内=5月1日夜までの空爆やミサイル攻撃は発生していません。この点では弊社情報網の信頼性確認制度適切に機能していたとしかったと言えるでしょう。加えて4月30日~5月2日はカレンダー通り日本での業務が行われるお客様が多く、即応体制も確保できていたことから30日時点では強い警告等は行っていませんでしたが、こちらもお客様に無用な負担をかけずに済んだという点で判断が正しかったと評価しています。
他方で、1日までの5月2日インドおよびパキスタンに駐在者・出張者がいると把握しているお客様のご担当者に直接「インドおよびパキスタン国内に滞在中の全社員/関係者の人数と所在地の再確認及び緊急時の連絡用電話番号が間違っていないか確認を行ってください」、とのアドバイスを行いました。これは弊社独自の情報源から入手した各種情報や分析から日本が連休となる5月3日~6日の間に何らかの動きが起こりえると判断したためです。

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弊社の助言を受け、複数の企業様で5月2日中に今一度インド・パキスタン両国の滞在者数確認、現地との予防的な連絡(ヒアリング)を行っていただいたと聞いています。あくまでも予防的な措置ではありましたが、結果的にこの動きが5月7日、日本時間朝一番での速やかな安否確認につながったお客様もいらっしゃいました。
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5月7日朝一番での弊社アドバイスと顧客の動き

5月7日早朝、日本時間の朝4時半ごろからインド軍がパキスタン領内/支配地域への攻撃を実行しました。弊社情報網がある程度詳細な情報を提供してくれていたため、被害の実態等は日本国内で企業が業務を開始する時間よりも早く、ある程度把握できていました。これを踏まえ弊社からお客様に第一報として、その時点でわかっている情報を提供し、各社の駐在者・出張者の滞在先を踏まえたアドバイスを行いました。具体的には
1)領空が封鎖され、飛行機が運航していないパキスタン国内に滞在している方は安全な場所で待機
2)インド国内にいらっしゃる方の避難は業務時間開始後本社としての対応要件等だが、◎◎の条件を満たしている場合には絶対に避難が必要とはいえない
3)当面の両国新規出張者はその業務の緊急性・必要性を踏まえて今一度出張可否を検討
といった助言を文章で送付しました。ほとんどのお客様の通常勤務時間開始前、もしくは開始直後に情報を送付したことで、海外事業の労務・危機管理を担当される方には出社次第すぐに経営層・上級管理職とのミーティング・説明に活用いただけたのではないかと感じております。
その後、同日夜には以下のような地図及び各種関連情報を取りまとめた資料をインド・パキスタンに関係者を派遣しているお客様ご担当者皆様に送付しました。図解に加え、弊社が分析したその時点での先行きの見通しとして楽観シナリオ(5%程度)、メインシナリオ(80%程度)、悲観シナリオ(15%程度)といったシナリオ分岐をお示した資料でしたので、この分析を踏まえて当面の出張をキャンセルする、インドの南側に位置する拠点では当面情報収集を意識しつつも通常業務を維持する、といった的確な判断を行っていただけたものと考えています。

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なお、インド・パキスタンに駐在者/出張者がおられない企業・団体・学校法人からはリクエストがあったお客様にのみ共有しており、この点でも無関係なお客様に必要以上の情報を提供することは避けています。ただし、今回は日本語メディアでも大きく報じられたこともあり、念のため情報が欲しい、といったお声もありましたので、その場合には毎月の情報提供契約の一環として追加費用なしで情報を提供させていただいております。

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停戦合意直後の弊社アドバイスと顧客の動き

5月10日日本時間の夕方、インドとパキスタンの停戦合意に関する情報がトランプ米大統領のSNSを皮切りに流れてくるようになりました。弊社として、フェイクニュースや信ぴょう性の確認できていない情報をお客様にお渡しするわけにはいきませんのでまずは信ぴょう性の確認に動きました。空爆が行われた、ミサイルが発射されたといった「今まさに被害が出ている」状況の場合には安全確保が最優先ですので結果的にフェイクニュースやデマだったとしても念のための安全確保策を優先させた方がいいケースもあります。他方で、状況がよくなっているというニュースの場合は安易に各種報道やSNSを鵜呑みにするのではなく、信ぴょう性を確認するのが弊社の流儀。

結果的にインドおよび欧州の情報源からの連絡や意見交換を踏まえ、10日夜のうちに今後の見通しをとりまとめ11日朝にお客様に停戦合意が成立したことを中心に追加の情報を提供いたしました。この際も、今後の展開がどうなるか、5月2日時点のシナリオを起点として現在地がどこなのか、また今後どのように両国関係が変化していきそうかを解説し、お客様のインド・パキスタン派遣人材の実態を踏まえながら一社一社個別の助言を提供しています。

ここから先は現在進行形の印パ外交戦に関係しますので一般公開であるホームページではご説明できません。もし、上記のような情報提供や海外事業展開先の関係者保護に資する迅速な助言が必要な方、ご関心をお持ちの方は弊社お問合せページから照会下さい。

この項終わり