原子力発電所テロ対策不備は他人事じゃない

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柏崎刈羽原発のテロ対策不備

2021年6月2日東京電力株式会社は「核物質防護に関する独立検証委員会」の設置を発表しました。これは2021年2月~4月頃まで、柏崎刈羽原子力発電所にて

 ・核物質防護設備の機能の一部喪失

 ・核物質防護設備に立ち入るためのID不正使用

 ・安全対策工事の一部未完了

といった原子力発電所の安全な運転を脅かしかねない事例が相次いで発生したことを受けた対応です。

 

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東京電力株式会社がウェブサイトで発表している一連のインシデント

 

核物質を扱う原子力発電所で核物質の防護機能が十分に働いていない、あるいはIDを不正利用して規制区域の内部に本来のIDの持ち主ではない人物が入り込めてしまっているという事態は由々しきものです。背景については東京電力株式会社のウェブサイトやメディアを含め多くの解説がなされています。概ね原子力利用に関連した規制を定める法律に違反しているか、もしくは社内で定められたマニュアルや行動様式が軽視されている(あるいはそうしたマニュアル等が機能しない状態を放置していた)ことが背景にあると指摘されています。

 

4月の時点で「原子力規制委員会が柏崎刈羽原子力発電所に対する原子力規制検査の対応区分を第1区分に変更することを通知する日まで、柏崎刈羽原子力発電所において、特定核燃料物質を移動してはならない」という措置が確定しており、当面の間同発電所が再稼働することはありません。しかしながら、安全対策、危機管理を専門とする当サイトとしては東京電力の内部調査のみならず、外部調査を含めて対応策を検討し、速やかに事態の改善を徹底すべきと考えていましたので、今般独立調査委員会が立ち上がったことを評価しています。

 

本サイトをご覧の皆様の大多数は原子力発電所を運営するお立場にはないと思います。しかしながら今回の件は東京電力株式会社特有の失態なのでしょうか?当サイトではそうは考えていません。我々がご相談を受ける一般の事業会社や海外で事業展開している企業・団体の危機管理体制、もしくは留学生を送り出している学校法人等でも本来あるべき危機管理体制と実態に乖離がある事例を多く見ているからです。

 

【次ページでは・・・東京電力以外でも発生したマニュアル無視、法令無視の事例を紹介します】