報道されない=「何も起こっていない」ではない

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日本語メディアを眺めていて感じる違和感

ご無沙汰しております、代表の尾崎です。

先日、イラクで何者かがロケット砲を発射し、各国大使館が集まるグリーンゾーンに着弾するという事案が発生しました。

イラクバグダッド市内大使館街へのロケット砲着弾

 

関連する情報を集めていた時、自分自身ちょっとした違和感を禁じえませんでした。各種英語の報道によればロケット砲の着弾地点は「無名戦士の記念碑」近くでした。同じグリーンゾーン内とはいえ、決してアメリカ大使館の至近距離というわけではなかったにも関わらず、日本語の報道はこぞって「米大使館近くか」と報じていたのです。

 

事案が発生した背景にイランとアメリカの緊張が高まっており、ストーリーとしては「親イラン勢力がアメリカ大使館を狙う」という建付けは理解しやすい文脈です。が、他にも多くの建物がある中であえて着弾地点から約1キロ離れたアメリカ大使館だけを名指しして「米大使館付近」とするのはミスリーディングな印象を受けたのです。

 

確かに一部英文メディアの速報では

 

「アメリカ大使館付近で爆発があった」

「複数の大使館から爆発音の報告があった」

 

といった報告になっていましたが、少し事実確認をすれば、決してアメリカ大使館付近に着弾したと報じることにためらいがあってもよさそうです。

 

この一連の流れを見ていて、日本語の報道はひとまず海外の英文報道をそのまま訳して仕事を終わらせているのだろうか、と感じた次第。ただ、日本人1億2500万人もいる日本人のうちバグダッドやこの事案に関連する方は数百人から多く見積もって千人というスケール感でしょうから、そこまで労力をかけられないかもしれないな、というのが個人的な感想でした。

 

ちなみに、イラク治安当局はこの事案の翌日「アメリカ大使館を狙ったロケット砲発射という説は事実ではない」と発表しています。

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海外ニュースの日本での扱いは「遅い・少ない・小さい」

我々は「海外安全.jp」というHPを運営している関係上、日々海外で日本人に危険が及びそうな情報を集めています。毎日海外で発生しているニュースをチェックする立場で日本国内の大手メディアが報じる内容を見ていると海外での重大ニュースもかなり省かれてしまっているな、という印象を抱きます。

日本人が死亡した事例は別として、甚大な被害が発生していたり、周辺地域への影響が深刻と思われるテロ、襲撃等の報道はあっという間に目立たなくなってしまいます(以下参考までに主要なテロ事案を示します)。視聴者の関心が続かない、と言われてしまえばそれまでですが、世界各地で起こっていることを伝えるのがニュースであり、報道されてもよい事案は多々あるように思うのです。

加えて日本国内のメディアは海外で発生した事案の報道タイミングも少し遅いように思います。英文を日本語に訳す必要があるからなのか、時差等の関係なのか、詳細は分かりません。しかし、海外で何らか治安事案が発生した時に、我々が英語や現地語のニュースを引用して、日本語で紹介した時点で、大手日本語メディアにはまだ情報が掲載されていない、ということもしばしば。いざニュースが載ったとしてもごく数行に縮められて紹介しているという事例も多く見てきました。

 

残念ながら、日本語のニュースでは海外で発生する出来事を報じる際、「遅い、少ない、小さい」伝え方に留まっているように思います。

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自分の行先のニュースは最低限日本語と英語でチェック

さて、尾崎個人の愚痴っぽくなってきましたが、本題はここからです。

日本語の各種メディアの在り方は我々にはどうすることもできません。また、視聴者の興味関心が海外ニュースに向いていない、という側面もあり、各種メディアのせいにばかりもできません。ただし、皆さんにどうしてもお伝えしたいことが一つだけあります。

 

それは日本語で報じられていなくても、世界各地では様々な事件・事故・テロ・襲撃・デモ等が起こっているという事実です。自分が日本語で関連報道を目にしないからと言って、世界で何も起こっていないということではありません。日本国内ですら、ご自身の住む地域から離れた地方の小さなニュースを目にすることは少ないはず。しかしながら、そこでも交通事故や殺人事件、ちょっといい話などなど様々なことが起こっていますよね。

 

例えば皆さんが海外に旅行や出張でいらっしゃるとき、日本語だけで治安情報を探しているとどうしても情報量が限られることがあります。また、最近発生した大きなテロや重大犯罪のニュースも日本語では報じられていないかもしれません。海外に渡航されるのであれば最低限日本語と英語でその国のニュースを探してみてください。そうすることで、皆さんがより実践的にご自身の安全を確保できるようになるのです。

 

もし行き詰ったときには日本政府外務省の安全ホームページや我々が運営する「海外安全.jp」のホームページツイッターもチェックしてみてください。できる限り多くの日本人の方のお役に立てるよう、日本語のメディアが大きく報じない安全関連のニュースを日本語で更新しています。

 

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