安全対策は手段であり目的ではない

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「デジタル化は手段であって目的ではない」

2020年10月21日、岸田文雄衆議院議員が日本記者クラブで記者会見を行いました。同氏の新著発行に合わせて菅新政権やご自身の政策について一時間ほど語られたそうです。

 

当サイトは政治や政策についての議論を行う場ではありませんので深入りはしませんが、菅内閣になって大きな潮流になっているデジタル化について

「手段であって目的ではない。デジタル化を進めてどんな社会を目指すのか、長期的な視野も必要ではないか」

と発言された点は興味深いところです。

 

デジタル庁の設置や民間からの人材登用が話題に上っています。ただし、デジタル化そのものを推進することが重要なのではないですよね?デジタル化を推進した成果として、より効率的な社会、より多くの国民が暮らしやすい社会を実現することが目標ですよね?という趣旨なのでしょう。

 

ただ単にハンコをなくせばいい、何でもかんでもデータ化すればよい、というわけではないのは皆様も頷かれる点ではないでしょうか。

 

 お金をかけてホームページを作成したはいいけれど、あまり見られていない

 業務システムを導入したけれど、業務効率は変わらない

 お客様からの声をチャットで頂いているが、記録は紙で保存している

 

といった事例もしばしば見聞きします。これらはデジタル化、IT化が先行してしまい、デジタル化した成果をうまく描けなかった事例なのかもしれません。ホームページを作ればいい、システムを作ればいい、ではなく実際にはそれらを活用し、また運営保守し、必要に応じてアップデートしていかなければ無用の長物になってしまうのも現実。

 

デジタル化そのものが目的になってしまうとまずいよ、という警鐘はまさにその通りではないでしょうか。当サイトが扱う海外での安全管理でも似たようなことはしばしば起こってしまっています。

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「安全管理のための安全管理」は無意味

安全管理をしっかりやろう!と決意されることは企業・団体にとって非常に重要です。当サイト代表が日本経済新聞に寄稿した通り、グローバルな感染症拡大を教訓として今後海外での安全管理を内製化する動きも増えてくるでしょう。しかしながら時としてリスク管理担当部門等が間違った解釈で安全管理に取り組まれる事例もあるように感じています。

 

従業員の誰一人死傷しないように!

これは非常に重要な考え方です。この理想を追い求めることが大切だと当サイトも考えます。

 

安全管理、健康管理が最優先だ!

はい、安全で健康的な職場環境なしにはどんな人材も能力を発揮できません。

 

リスクがある場所には進出はやめておこう、出張を控えよう、撤退しよう!

それで皆さんの志は達成できるでしょうか?存在するリスクをコントロールすることが安全管理の本質です。

 

といった具合に、安全第一を最優先に掲げるがゆえに、事業現場を必要以上に縛ってしまうケースを承知しています。もちろん、どうしても企業・団体としてリスクを取れないというケースはあるでしょう。例えばアフガニスタンやシリアに今すぐ事業展開したい、と相談を受ければ99%以上「もう少し治安が落ち着くのを待ちましょう」とお答えすると思います。

 

他方で、世界のほとんどの国・地域であれば

 今この瞬間に〇〇に行かないと事業が実現しない、

 この出張に我々の夢がかかっている!

 ようやく取れた現地要人とのアポが実現できれば市場が開拓できる!

といった「どうしても今を逃したくない」場合、リスクコントロールをしっかり行えば活動を継続できる可能性があるのです。もし安全第一だから、重要な局面だけどやめておこう、とお考えになるならそれも一つの選択肢ですが、果たしてそれでよいのか、は事業部門とリスク管理部門双方で十分に検討いただく必要があるでしょう。

 

安全管理のための安全管理であれば、「リスクがあるからやめておこう」という結論になるでしょう。ですが、安全管理はあくまで手段であって目的ではありません。皆さんの志、ミッションやビジョンの実現のために何をしなければならないのかの方がより重要度は高いハズ。重要度の高い皆さんの挑戦が不本意な形で止まらないよう、リスクをコントロールする手段が安全管理なのです。

 

risktaking-chart

 

リスクを過大に評価しすぎて挑戦を止めてしまうのは本末転倒。だからと言ってリスクを過小評価して関係者が死傷することも望ましくありません。皆さんの挑戦の重要性と現実世界のリスクのバランスをとり、適切なリスクテイキングが行えるようにすることが安全管理の本質ではないでしょうか。

この項終わり