銀行口座の不正引き出しから考える安全対策

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安全対策で「相手任せ」をすると

フィジカルな安全対策において日本企業・日本人がやってしまいがちなのは委託契約を結び警備会社や管理会社に任せきりにしてしまうこと。警備会社や管理会社等は契約に基づき必要な対応を行うでしょうし、何か対応に不備があった際は契約に基づく責任関係も明確化されます。委託元の会社にとっては必要な対応は取っていたと「言い訳」することも可能です。

 

しかしながら、日本において委託先である警備会社や管理会社の業務の質をチェックし、定期的によりよい安全対策サービスを提供するように要求している企業はどのくらいあるでしょうか?世界的にみれば相対的に治安のよい日本では任せきりでもよいかもしれませんが、海外の事業展開先で同じように委託しっぱなしでも大丈夫でしょうか?万が一にも海外に派遣した自社の関係者・従業員が危険に晒された際、

 

「契約上警備会社に責任があります」

 

と説明して当事者やそのご家族、あるいはマスメディア等は納得するでしょうか?

 

 

一連の不正引き出し事件の要因に関する日経新聞の指摘を今一度確認してみましょう。

ゆうちょ銀やドコモ口座など一連の不正引き出しに共通するのは、連携で生まれた隙を狙われた点だ。不正防止には自社と連携相手双方の安全対策が欠かせないが、実際は連携先の安全対策は相手任せになっている。

ペイペイやLINEペイは登録時に携帯番号による認証を求めているが、「相手」のゆうちょ銀が口座番号と暗証番号があれば入金可能にしていたため不正に使われた。ドコモの場合、メールアドレスだけで架空名義の口座登録ができ、そこにゆうちょ銀など甘い金融機関のセキュリティーが重なり不正が拡大した。

 

一連の事件から学ぶべき教訓は、委託したから、相手の領分だから、といって自社や関係者の命に関わる問題を放置していてはいけない、というものです。委託先、連携先の安全対策を他人事として放置してはいけないのです。

 

例えば、セキュリティの向上を目的に監視カメラを設置したとして、実際にカメラの映像を監視している人がどのように働いているか確認したことはありますでしょうか?駐在員の自宅やオフィス入り口に配置した警備員がどのような訓練を受け、暴漢などの侵入を予見する能力があるのか、実際に侵入を試みた際にどんな対応ができるのかご存じでしょうか?

 

監視カメラのモニター画像をチェックするスタッフがクリケットワールドカップの中継に夢中になっている

門番役の警備員がよく居眠りをしている/席を離れている時間が長い

警備会社の責任者に電話しても滅多につながらない

セキュリティカードであける電子錠が停電等の理由で長い間不具合を起こしており扉が開けっ放し

非常口の案内板はあるのに荷物置き場になっており出口にたどり着けない

 

これらはみな安全対策の現地実態を確保した際、海外で目撃したまずい事例です。警備会社やオフィスビルの管理会社が対応すべき事項ではあるのですが、相手方に任せておいて事態が改善するはず、という日本的発想は通用しないこともしばしば。名だたる大企業でも失敗してしまったように「委託先任せ」「連携相手先任せ」では、いざ自分の身の安全すら守れないということにもなりかねません。

 

海外で事業展開されている企業の本社ご担当、現地で安全対策の責任を負う方、また実務を担当される方へ、ぜひ「委託先」が具体的にどんな業務を行っているのか、どういう素養のどんな人物が安全対策を担当しているのか、も確認するようにしてくださいね。

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警備員を配置するだけでなく、定期的に仕事ぶりを巡回指導することが重要

この項終わり