誰もができる安全対策の仕組みづくりを
企業・団体の安全対策を担う方は常にゆとりのある状態であるべき、という理由をご説明してきました。しかしながら、現実にはそんなに余剰人員を抱える余裕はないでしょう。我々がご相談を受ける企業・団体様でも安全対策を専門で担当する部門があればまだよい方。総務部門や人事部門、海外事業部門の方が安全管理も兼任されていることがほとんどです。
緊急事態が発生しなくても、毎日多忙な方々が多い中、安全対策を担当しているからといって何の緊急事態も発生していないタイミングで定期的な休みを取るのは難しいのではないでしょうか?しかし緊急事態はいつかどこかで発生します。その時、安全対策担当者はふらふらになりながら、仕事を続けるしかないのでしょうか?
当ホームページでは繰り返しお伝えしてきていますが、安全対策に関する取り組みの8割~9割は少しの努力で身に着けられる「技術」です。安全対策だけを何十年もやってきたプロ中のプロ以外に手出しできない分野ではありません。むしろ「エクセルで売り上げデータをまとめる」「家庭で食べるための料理ができる」「市街地を自動車で移動できる」といった皆さんの日々の行動に近いと言っても過言ではありません。ただ、パソコンや料理や運転免許と違って「技術」を習得するための方法や道筋を教えてくれる人や書籍が身近に存在していないだけです。
関係者の命を預かる安全対策担当者が、ふらふらの状態で緊急事態対応を続けることは不可能です。そして安全対策担当者を十分な人数配置することも困難です。ならば、道は一つ。皆さんが所属する企業・団体内で安全対策に関する「技術」を持った方を増やしておくのです。
一般的な企業・団体であれば、いかに世界各地に展開していたとしても消防署のように毎日緊急事態に対応するわけではありません。定期的に安全対策業務を担当する方が休むことができる環境を整え、万が一緊急事態対応がはじまる場合でも万全の体調で挑めるようにしておくこと。そして、緊急事態対応も複数の方が交代しながら適切に取り組むことができるようにしておくこと。いざという時には誰もが安全対策業務を肩代わりできる状況になっていればこれほど心強い組織体制はありません。
安全対策担当者のゆとりを確保しておくことは組織全体の緊急事態対応能力を高めることの一部です。海外に事業現場をもつ経営者の皆さんにはぜひとも安全対策を担う方の労働環境にも気を配り、安全対策「技術」を持った内部人材を育てておくことをおススメします。
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