「完璧な警備体制」という落とし穴

この記事のURLをコピーする

日米両政府が提供する「完璧な警備体制」

 

アメリカ合衆国の大統領が来日するわけですから、その移動ルートや滞在場所の周辺地区はかなり厳重な警備体制となります。各種報道によれば、過去最多となる最大25000人以上の警官が大統領来日中の警備のために動員されているとのこと。皇居周辺ではトランプ大統領到着の前日から多くの検問所が設けられ、一般の方ですら検問でチェックされていたと聞きます。

 

来日中はおそらく、東京都内、千葉県内、神奈川県内では安全の確保が最優先課題になるはず。25日~28日にかけてごみ箱が撤去されたり、コインロッカーが使えなくなったりということも想定されます。さらに報道によれば、トランプ大統領とイバンカ夫人が安倍首相夫妻とともに大相撲夏場所の千秋楽(最終日)を、土俵に近い升席で観戦するとのこと。さらに優勝力士には「トランプ杯」の授与も予定しているとされています。

 

大相撲が行われている国技館はその構造上、土俵を中心に多くの座席がすり鉢状に並んでいます。土俵周辺にいるトランプ大統領を攻撃することは、位置関係的にどの席からでも可能です。アメリカ大統領の警備をおろそかにするわけにはいきませんので、日米の治安当局(大統領のための警護隊であるシークレットサービス含む)は何度も下見と打ち合わせをしているようです。

 

国技館で警備計画を検討していると思われる日米警備担当者の様子(産経新聞のHPよりキャプチャ)

 

まさに日本の威信と米国の誇りをかけて最高の警備体制が敷かれているのが今回のトランプ大統領来日なのです。しかしながら「最高の警備体制」を実現するためにはヒト・モノ・カネの動き方が一般の警備体制とは桁が二つ違います。既にお伝えしたようにに25000人の警官動員に加えて、国技館の升席買い占め、周辺地域での一般住民も含む検問、その他交通機関への規制などなど多大な費用と人的資源の投入、そして国民生活への支障が発生しているのです。

 

まさに国賓のためにしか実現できないような警備体制ですね。こういった「完璧な警備体制」が海外で活躍する日本人にも実現するとよいのですが、さすがに無理があります。日本以外の国の警官を何万人単位で動かすことも難しいですし、現地の住民生活を妨げることも難しいでしょう。また、日本人の周りに現地の方等が近づかないようにすることで、反感を買う恐れだって否定できません。

付け加えるのであれば、いかに日本とアメリカの政府と言えど、この「完璧な警備体制」を一年も二年も維持することは不可能でしょう。予算的にも警官の人繰り的にも継続は不可能であり、あくまでトランプ大統領の3泊4日の来日期間限定の特別体制だからこそ、「完璧な警備体制」を構築できたと言えます。

 

「完璧な警備体制」という言葉は人命最優先を掲げた場合、非常に使いやすい言葉です。しかしながら、そもそも実現不可能な警備体制を求められてしまうと海外での事業現場の方々は途方に暮れてしまいます。では「完璧な警備体制」が構築できないとすれば、具体的にどのように関係者と海外資産を守ればよいのでしょうか?

 

【次ページでは・・・「完璧な警備体制」は一般的に実現不可能。ならば名より実をとりましょう】