予算がなくてもできる安全対策措置はある

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本稿執筆監修者 / 海外安全.jp代表 尾崎由博

1981年生。2006年より国際協力機構(JICA)にて勤務。インド、パキスタン、アフガニスタン等南アジアにおける安全対策、開発支援案件の形成、実施を担当。パキスタン駐在中国政選挙や首都における大規模反政府デモ等に対応し、現場での安全管理業務ノウハウを体得。2016年7月に発生したバングラデシュ、ダッカレストラン襲撃事件後に発足した安全管理部の第一期メンバーとしてJICA安全対策制度、仕組みの多くを構築した他、組織内の緊急事態シミュレーション訓練を担当。国連機関及び世界銀行の危険地赴任者向け訓練等を受講しており、JICAのみならず国際機関の安全対策研修内容も熟知。2018年より独立、2020年株式会社海外安全管理本部を設立し代表取締役就任。クライアント行政機関、大手セキュリティー企業、開発コンサルティング企業、電力関連企業、留学関連企業、各種大学法人、一般社団法人や独立行政法人など講演実績:大阪弁護士会「パキスタン投資・リスクマネジメントセミナー」海外コンサルタンツ協会「海外活動安全強化月間セミナー」日経メッセ「セキュリティショー」「多元化する危機管理」他多数。日本経済新聞2020年11月24日付13面に寄稿記事が掲載。

海外安全.jp代表

安全管理コストは負担できないと考えている方へ

代表の尾崎です。日本でも新型コロナウイルス感染症の感染が再拡大してきました。緊急事態宣言の発令地域も拡大傾向です。皆様どうぞお体最優先にお仕事/生活なさってください。

さて、海外での安全管理アドバイスを生業にしている私ですが、実は私のところにお話をいただく際、

「具体的にどうすれば関係者の安全が守れるでしょうか?」

という相談はほとんどありません。

むしろ

 

・海外進出するのですが、どこが安全でしょうか?(安全なところにだけ進出します)

・安全対策なんて自分たちではできません(ですので、「丸投げ」したいのですが)

・予算がないので、安全確保はどうしても後回しです(ということで、取り組むつもりはありません)

 

というお話をされている方が、いろいろなご縁で私のところにいらっしゃる、というケースが圧倒的に多いです。

 

特に一番最後に書いた予算の制約によって安全管理コストが負担できないとお考えの企業様、ご担当者様が多いように感じています。資金にあまり余裕のない中小企業や立ち上げたばかりのベンチャー企業ならば、当然コストはできる限り抑えたいもの。その気持ちよーくわかります。(私自身は安全管理のためのお金はコストではなく、従業員と組織全体を守るための「投資」だと考えているのですが)

 

とはいえ、コストであれ、投資資金であれ、資金制約がある状況下安全管理にそんなにお金かけられないよ、というのが正直なところなのだと思います。人の命がかかってきますので、真っ向から安全管理の必要性を否定される方はあまりいませんが、分厚い壁や屈強な警備員、防弾車などなど、どのくらい費用が必要なのか、想像すらできない世界に迷い込み、結果何も対応できないまま海外進出の話が進んでいくことも多いようです。そうはいっても、上司から「安全担当よろしくね」と不慣れな業務を任されてしまったご担当者様の率直なお気持ちを最初の面談の際にはひしひしと感じるのです。

 

そういう方が面談中どこかで発するコメントはこんな感じです。

 

「やっぱり予算がないと、防犯設備はもちろん、テロ対策みたいな安全管理はできないですよね・・・」

 

ここで議論がストップしてしまうと当方もお手伝いできることがなくなってしまいます。そこで、こんなコメントが出てきた際、ある質問を投げかけるようにしています。

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じゃあ質問です!

 

一時期流行したブルゾンちえみさんのネタのようになりますが、じゃあ質問です。

 

「皆さんは体調が悪い時にいきなり大学病院で先端医療を受けますか?」

 

特段健康状態に大きな不安のない皆様が少し体調が悪いという場合、普通は保険証を示せばせいぜい一回数千円程度で済むと思われる街中の開業医の先生のところへ診察に行くと思います。何もわかっていない時に超高額の、場合によっては保険適用外の先端医療をお願いしに行く方はまずいらっしゃらないはず。今の自分に必要な医学的な対応は何か、そして自分がどのくらいの予算を割けるかを無意識に計算し、開業医の先生に診てもらおうと判断されているのではないでしょうか?

安全管理も似たようなところがあります。

・高くて厚い堅牢な壁

・ライフルを持った屈強な警備員たち

・最高性能の防弾車

・スパイレベルの人材を使った機密情報の入手

はお金さえかければ、作ったり、買ったりできます。ただ、今皆さんに必要なのは高額な「先端医療」に相当するような安全対策でしょうか?

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防弾車一台の平均予算は数千万円~。運用維持費も通常の車両とは比べ物にならないコストが必要。

 

先端医療以外に開業医の先生にまず診てもらうという選択肢がなかなか思い浮かばないのだと思いますが、

 

「安全管理コストは予算がないので負担できない」

 

とおっしゃる担当者の方の大多数は、安全対策=「先端医療」級の施設・装備・情報入手体制、だと思い込んでいます。ですので、尾崎が最初の面談でお伝えするのは、

 

「いや、追加予算がゼロでもできる安全対策はありますよ」

 

ということです。

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予算を使わなくてもできる安全管理はある

「ほんとかよ!」

「そんなわけないだろ!」

 

とおっしゃる読者の方もいらっしゃるかもしれません。

が、本当です。追加の予算を使わずとも今すぐ実施可能な安全対策だってあります。進出先の国によっては従業員のみなさんの業務を一旦止めて、時間を少しいただくだけでもかなりリスクを下げられる場合だってあります。

また、「先端医療」」の安全対策、具体的には数千万円~数億円以上かかる安全対策以外にも、数万円から数十万円の追加コストで実施可能なアクションで、リスクを低減させることができることもあります。

 

もちろん安全管理に割ける予算が多くあるのであれば、念には念を入れてより多くの、強固な安全対策措置を講じていただければいいのですが、予算を使わなくてもできる安全管理はあります。ご関心ある方は面談のご依頼だけでも当方窓口までご連絡ください。御社の実情を踏まえて具体的にどのようなご提案ができるかお伝えさせていただきます。

 

なぜ、お金をかけなくても命を守る方法があるのか?海外安全以外で、皆さんもよく体験されている事例があります。例えば、地震への備え。

 

震度7にも耐えられる万全の建物を建てよう、既存の建築物を耐震補強しよう、とするとその費用は数億円では済まないかもしれません。日本は地震の多い国ですので、理想的には全国すべての建物、学校や住宅やオフィス、行政庁舎まで「想定外の地震」にも耐えられるだけの強度にしたいですね。ただ、すべての建物でしっかり工事しようと思えば、総額で何十兆円という規模のお金が必要ではないでしょうか?

ただ、現実には建物を強固にする対応に予算上の、また技術的な制約があることを我々はよく知っています。ですので、お金が比較的かからない、別の方法でもって対応しようとしているのです。それは、各自治体が行っている例えば以下のような対応です。

 

・地震が発生したら誰もが自分の身を守れるように防災訓練を徹底する

・最初の避難先は大きな公園や学校のグラウンドなどを指定する

・緊急時の連絡先を周知徹底しておく

 

予算が青天井になりかねないハード面の強化ではなく、低予算でも効果が得られるソフト面の対策を充実させていますね。優先的に割り振ったハード面の対策強化と低予算で実施可能な訓練や避難方法の周知等の組み合わせが世界的にも高く評価されている日本の防災能力につながっています。

 

現在進行形のコロナ禍についても似たようなことが言えます。(ウイルスの性質について未知の部分が多いため、100%断言できるわけではありませんが)病院や人工呼吸器、検査機器、ワクチンの購入費用・コールドチェーンといった施設・設備の充実が必要である一方で基本的な手洗いやうがいの習慣、マスクの着用、3密の回避等予算措置がほとんど必要のない対策も十分に効果がありそうです。

 

 

海外における安全対策も、低予算でも効果が得られるソフト面の対策はいくつもあります。ぜひ、

 

「安全対策コストを負担できない」

「安全対策予算に制約がある」

 

という方にこそ、ぜひこちらから当方あてにお問合せを頂きたい、と考えている尾崎です。

 

この項終わり