2022年版グローバルテロリズムインデックス概説

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グローバルテロリズムインデックスとは

オーストラリアに拠点を持つInstitute for Economics & Peaceという団体が毎年発表しているGlobal Terrorism Index(グローバルテロリズムインデックス)という指数があります。これは世界各地で発生したいわゆる「テロ」に分類される事件の数や被害規模を指数化して、ランキングしたものです。

このインデックスの特徴として

 ・世界中のほとんどすべての国・地域が評価されること

 ・同じ基準に基づき、国別に0~10の間で指数が算出されること

 ・毎年発表されるため指数の変化や順位の変化が見えやすいこと

 ・色分けされた地図が公表されるため、本文を読まずともテロ危険度が把握しやすいこと

などが挙げられます。

 

このインデックスの最新版となる、2022年版が3月に公開されており、こちらからダウンロードが可能になりました。約100ページの英文レポートとなっており一般の方が通読するにはちょっと大変かもしれません。当サイトでは例年最新版が発表されるたびに内容を確認し、過去分とも比較した上で、概要をお伝えしていますので以下是非ご一読下さい。

 

なお、2018年版から各国のランキング順位の変動が明記されるようになりました。代表の尾崎は数年前から

 

「テロリズムインデックスの各国順位の変動、特に急に順位が上がった国ではそれまで起こらなかったような大きなテロが起こることが多い。『アノマリー』ではあるものの、先行指標として有効かもしれない」

 

 

と発言していました。今年も順位の変動が明記されているのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で発表時期がずれたせいもあるのか、前回発表時の2020年版までと少し見方が違うようです。上記リンクのPDFで記載されている順位変動は2020年版からの順位変動ではない点ご注意下さい。当サイトでは2019年版及び2020年版との順位の比較を行っており、脅威度が高まっていると思われる国、治安情勢のトレンド変換点を迎えていると想定される国を後ほどご説明したいと思います。

ランキング順位の変動が明記されるようになった2018年版
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2022年版報告書の概要

まず目につくのは、世界全体での2021年テロによる死者数は7142人となり、過去最悪だった2014年に比べれば約3分の1まで減少したという報告です。しかしながらテロ事案の件数は5226件と増加していることが記載されています。テロの大多数は紛争地域で起こっており、特に2021年は各国の国境封鎖により欧米等先進国ではテロ件数が減っています。ただし、サブサハラアフリカ地域を中心にテロ件数の増加が観察されているといった地域別の傾向に差があることも注目に値します。

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テロ頻発地域は中東からサブサハラアフリカ地域にシフトしている

 

また、テロ事件のうち約半数(52%)は過激派組織、国際テロ組織によるものとされていますが、残りの約半分は組織的ではないテロに分類されています。個人や小規模なグループによるテロが増えてきていることが示唆されている点も要注意です。

なお過去数年間、テロ実行数でトップだったグループはアフガニスタンタリバンでしたが、昨年はISIS/ISILがテロ実行数で初めてトップとなりました。タリバンはアフガニスタンからの米軍撤退を機に同国で権力を掌握しており、今後テロ実行件数は減っていく可能性があります。

 

世界全体から見れば、西洋諸国でのテロ発生件数や死者数はそれほど大きな割合を占めているわけではありません。しかしながらこれまでに比して事件数も死者数も増加しており、過去と比べてもリスクが高まっている点は十分に注意しなければなりません。

2020年版報告書の巻末には新型コロナウイルス感染症により極右勢力の活動が加速する可能性を指摘し、これまでの経験則が通じなくなる可能性を指摘したコラムが収録されていました。2022年版では新型コロナウイルス感染症によって、国境の封鎖や大勢の人が集まるイベントの中止・延期等により特に西欧諸国でテロ件数が減少したことが明記されています。その上で、2022年以降新型コロナウイルスとの「共生」を目指し各種規制が撤廃された後テロが増加傾向になる可能性にも言及があります。

加えて、本調査の集計中にロシアによるウクライナ侵攻が発生していることは皆さんご存じの通り。世界的な食品・原油関連製品価格の上昇が各地の治安情勢に及ぼす影響も否定しきれません。ポストコロナ時代とも言える2022年以降の世界がどうなるのかはわかりませんが、これまでの経験則が通用しないことは容易に想像がつきます。これまで通りの安全対策では不十分=今までと同じ感覚で過ごしているとテロや襲撃に巻き込まれかねない、という点で警戒しすぎるということはありません。具体的なリスクが指摘されているわけではありませんが、2022年以降新たなリスクとして注目が必要と言えるでしょう。

 

2020年度版ではCOVID19とテロの関係は予測できないとしていたが、過去2年の統計を踏まえた分析がなされている

ご参考までに2022年版インデックス上位10か国は次のとおりです。2020年版から最もインデックスが悪化しているのはミャンマーでした。(2020年版での順位25位⇒2022年版での順位9位)

1位 アフガニスタン

2位 イラク

3位 ソマリア

4位 ブルキナファソ

5位 シリア

6位 ナイジェリア

7位 マリ

8位 ニジェール

9位 ミャンマー

10位 パキスタン

 

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当サイトが注目するテロの傾向

報告書からは世界全体でのテロ被害改善傾向が読み取れました。しかしながら、注意しなければいけないのはソマリア、シリア、ナイジェリアといった皆さんが行かないであろう国での被害改善が世界全体の統計に大きく影響しているという点です。つまり、ソマリアやシリア、ナイジェリア等過去にテロの死者数が多かった国・地域に滞在されない方にとってはテロの死者数減は額面通りには受け取れません。

 

また、冒頭ご紹介したように、当サイト代表の尾崎はグローバルテロリズムインデックスの各国ランキング変動やその他各種治安情勢を踏まえて、近い将来どういった国が危険か毎年検討しています。残念ながら警戒していた国で大きな事件が発生することもありますし、注意して情報を集めていたものの特段なにも起こらなかったという国もあります。

 

ご参考までに当HPが考える向こう一年間のテロ要警戒地域、またテロ発生傾向を提供します。

 

・インデックスの順位が上がっている国のうち治安に関係する情報などを踏まえ特に注意が必要ではないか、と当サイトが考える国はギリシャ(44位⇒29位)、ペルー(75位⇒37位)、ウガンダ(55位⇒44位)

・これらの国は日本人一般にとって国名とテロが結び付きづらく、警戒が必ずしも十分ではない可能性もある。

(イラクやアフガニスタンのような大規模なテロが次々と起こるという意味ではない。小規模ながら現在の警備状況では防ぎきれない無差別テロなどによって、一般人に被害が発生しても驚かないという意味合い)

・上記の他、特にインデックスの順位が悪化している国はブルキナファソ、ミャンマー、ベナン

・新型コロナウイルス感染症とロシア・ウクライナ紛争に伴う世界的インフレは経済格差の拡大に直結しうる。孤立を深めた貧困層など過激派に参加しやすい層も生まれている点に十分注意

・ウクライナからの避難民や経済的背景から移民/難民が増えれば極右による過激な活動が一層活発化することも想定される。西洋諸国を中心に過去数十年とは傾向の違うテロ被害が深刻化しても不思議ではない

・ヨーロッパ及び欧米では引き続き銃の乱射や車両の突入といった「誰でもできてしまう」単独犯によるテロへの警戒を解いてはいけない。過激派組織、国際テロ組織に属さない犯行主体によるテロが増加している点要注意

 

最後に一点目で指摘した要注意国に対し、日・米・英・豪各国がそれぞれの国民向けにどのような旅行前アドバイスを提供しているかまとめたぺージのリンクをご紹介しておきます。

 

ギリシャ治安情勢最新情報

ペルー治安情勢最新情報

ウガンダ治安情勢最新情報

 

 

弊社では過去のGlobal Terrorism Indexレポートを参照し、特定の国ごとのインデックスの経年変化、直近のテロ発生傾向、今後の要注意点等を取りまとめて提供することが可能です。海外展開中の国・地域のリスクが気になる方や、ポストコロナの新たな海外事業展開を計画中の方、進出先候補を比較検討されている方などには是非ご活用頂きたいサービスです。

簡易な分析であれば一か国48,000円(税別)~承ることが可能です。ご要望の方はコチラの問い合わせフォーマットよりお気軽にお問合せ下さいませ。

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この項終わり