海外で活躍する人材を育てるには

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安全管理人材の不足は近い将来大きな課題に

 

そうはいっても安全管理のような特殊な分野は専門のセキュリティ会社に任せればいいんじゃないの?というお考えもあるでしょう。そこで、少し話は変わりますが、今現在日本全国で課題になっているお話をしたいと思います。

2020年9月24日付で日本経済新聞はサイバー攻撃が脅威である、と有価証券報告書に記載した企業の割合が5割に達したと報じました。個人情報を盗む、企業の保有する技術情報を盗むといった手口もあれば、パソコンの機能を停止させ「身代金」を要求する、内部のデータベースを破壊する、などなどサイバー攻撃は増加傾向にあり、また手口のバリエーションも増えているようです。

 

これに対し、日本企業ではサイバー攻撃を防ぐための情報セキュリティ人材が圧倒的に不足していると言われています。尾崎自身はこういったIT関連、サイバーの専門家ではありませんが、日本政府総務省や経済産業省をはじめ危機管理に関わる様々な方から同じような話を聞きますので間違いない話だと思います。

 

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日本政府総務省が発表している情報セキュリティ人材の不足状況(総務省の報告書よりキャプチャ)

 

サイバー攻撃は脅威だと認識しているけれども、対応する人材はいない。これは極めて深刻な状況です。例えて言えば、地域での犯罪が増えているのに警察官は増えない、子どもの数が増えているのに教員の人数が足りない、というのと同じ。課題を解決できるメドが立たないのですから困った状況です。これはひとえに、将来課題となるであろうテーマへの備えが後手を踏んでしまったが故の事態でしょう。

 

海外での安全管理についても同じようなことが言えます。海外での日本人・日本企業の活躍が求められるのは日本国内の状況を考えれば必然です。しかしながら、活動を継続し続けるための安全管理は大手企業ですらセキュリティ会社に外部委託して任せきりにしていることもしばしば、という状況。組織内での安全管理体制の構築、そのための人材育成に取り組んでいる企業はほとんどないと言っても過言ではありません。

このままいけば近い将来

 

「安全管理は喫緊の課題。ただし、担当できる専門人材がいない」

 

という言葉が聞こえてきそうです。あれ、現在サイバーセキュリティの分野で起こっていることと同じではありませんか?現在、サイバーセキュリティ対策を進めることができず、企業の事業継続そのものにも影響が出ている中小企業もあるようです。海外での事業展開とセットで安全管理の担当者を育成しておかなければ海外事業を中止せざるを得ない、というシナリオもあり得るのかもしれませんね。

 

前のページまでにご説明してきたように、海外でも活躍できる人材に必要な能力は安全管理の実務を通じて身に着けることができる能力とかなり重複があります。今現在海外に展開している企業・組織であれば、海外事業を成功に導くことのできる人材育成と社内の安全管理体制強化の一石二鳥を狙って安全管理実務に取り組まれてみてはいかがでしょうか。

 

 

この項終わり