海外での命綱・携帯サービス停止時のリスクと備え方

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KDDI異例の長時間通信障害

2022年7月2日未明から「au」のサービス名で携帯電話やインターネットサービスを提供していたKDDI社のネットワークが86時間ぶりに完全復旧したと発表されました。報道によれば定期的な設備交換作業を行う中で何らかの異常が発生し、ネットワークが不安定になったとのこと。原因は復旧した今も正確には特定できていないとのことで、今後の原因究明が待たれます。

 

スマートフォンやインターネット通信が日常生活に欠かせない生活インフラとなった現代社会で長時間の通信障害は命取りです。ここ数年特に、電話やパソコンのみならずインターネットを介して様々な機器が連動するようになっています。このため、今回の事案は過去最大と思われる3915万回線に影響が出たとのこと。そして、様々な機器同士をつないだシステムにも影響が出るような時代背景から、運送業や交通機関、金融機関、あるいは保健所、緊急通報等にも影響が出たことも特徴的です。

 

こうした影響の範囲の広さも踏まえて一部では「過去最悪の規模」との報道もなされています。他方で、過去に競合社であるNTTドコモ社やソフトバンク社も障害を起こしていますので、KDDI社だけが対応が不十分というわけでもないでしょう。むしろ、過去の通信障害発生状況を踏まえれば、どの通信会社でも起こりえる事故だったと言えるかもしれません。

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直近発生した大きな通信障害。大手三社はいずれも1000万人以上が影響を受ける通信障害の事例がある(中日新聞のウェブサイトよりキャプチャ)

 

普段当たり前に使っている通信機能が不意に停止した際に思いがけない影響を受けることに今回気づいた方も多いのではないでしょうか?今回は通信設備の機器交換が発端で起こったようですが、例えば自然災害や火災等によって特定の基地局が使用不能になる、といったケースだって考えられなくはありませんよね。

 

日本国内ですらこうした事態が起こりうるのは皆さんが今回目撃・体験された通りです。では海外ではどうでしょうか?日本のように数日で復旧が可能でしょうか?もしくは財政難等による危機老朽化、パーツ交換の遅れ等によりより一層広範囲に悪影響が及ぶかもしれません。

国や地域によっては政府による通信遮断が指示されることだってあるのです。日本では想像すらしない事態だと思いますが、弊社では何度もこのような事態に備えたコンサルテーションを行ってきていますし、記録も残っています。

https://twitter.com/netblocks/status/1482493145887739911

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海外で通信網が切れたら安否不明になる

海外で通信障害が発生した際厄介なのは日本から渡航している駐在者/出張者との連絡が取れなくなってしまうこと。本人やご家族の身に危険があるのか、ないのかすらわからないという状態になりえることが大きな課題です。安全対策以前に現状把握ができない、というのは大変危険な状況ですよね。

まして通信が途絶えた状態で犯罪被害に遭った場合、どのように助けを呼べばよいのでしょうか?日本の本社、あるいは海外の事業拠点だって救援を送るに送れません。通信手段を維持し続けるというのは安否確認のためにも、緊急時の第一報のためにもなくてはならない存在なのです。

 

当サイトでも初期のコラムで海外での安全管理に最も重要な道具は携帯電話である、と明記しています。遠く離れた海外において従業員・関係者を保護する基本の基は現地とのコミュニケーションなのです。

【参考コラム】海外での安全管理に最も重要な道具とは・・・・ 

 

連絡網を更新して、定期的な緊急連絡訓練をしていたとしても肝心の通信手段が使えなくなってしまっては意味がありません。日本でも通信障害が起こりうることがわかっているわけですから、ある程度の備えをしておくことは「安全配慮義務」の一部と言っても過言ではありませんよね。

 

今回のようなシステムトラブルに起因する通信障害はもちろんのこと、自然災害に伴う通信途絶、あるいは日本国内では想像できない理由による通信遮断だってあり得る中でどのように連絡体制を整えるのか、は海外に従業員・関係者を派遣する際に最初に考えなければならないポイントと言えます。

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特定の通信事業者に依存することがリスク

弊社では普段、従業員、関係者に某通信社のガラケーと別の通信会社のスマートフォンを貸与しています。お金は多少余計にかかりますがあえて二回線を確保することで通信手段が途絶える可能性を少しでも減らすリスクヘッジを行っています。また、弊社代表の尾崎はポケットWifiも別途個人的に契約をしており、万が一両方の携帯電話が途絶えたとしてもチャットアプリやメールなどを使っての通信ができるように工夫しています。(尾崎はほとんどの外出時にバッテリーチャージャーも持参していますのでいつもたくさんの機器を抱えています)

 

こうした弊社の対応はそれぞれの従業員、関係者が途上国を中心に携帯電話による通信が途絶えることを経験してきたことが背景になっています。日本では想像できないと思いますが、

 

・政府の命令で携帯電話会社が特定地域の携帯電波を遮断した

・携帯電話会社施設で停電等が発生し、通信できない

・通信が集中し、携帯電話会社の通信キャパシティを超え、つながらない

 

といった事態が起こることもありえます。このため、複数の通信手段を確保しておくことはハンカチやティッシュ(今ならマスクですかね)を持ち運ぶような感覚で自然に行うようになっているのです。このため、この数日弊社関係者はKDDIの通信障害には一切影響なく通常通り業務を続けることができました。

 

既にご説明してきたように、特に海外では通信手段の維持は生命を守るための命綱と言っても過言ではありません。特定の通信手段や通信会社に依存することは弱い命綱しか確保できていないのと同じ。

 

例えば

 

・複数の携帯電話会社のSIMカードを持っておく

・携帯電話に加えてポケットwifiを携帯する(スマホをwifi経由で使用する)

・衛星携帯電話を使用する

・無線機を活用する(ただし現地電波法、通信法に注意!)

 

といった複数の通信手段を状況に応じて備えておくことをおススメします。ただし、特に衛星携帯電話と無線機に関しては、各国の法律で使用が規制されていることもあるため、購入する前に必ず現地法規をご確認の上、使用を開始してください。

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