開発途上国で子育てをされる方へ~家族で赴任するか判断する~

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赴任先の情報をまとめてみよう

開発途上国への発令を受けた場合、どんな方でも一時的な混乱は避けられないと思います。しかしながら、辞令の受諾まで、もしくは実際に現地に着任するまでの期間が長いことが海外赴任の場合の特長です。この時間を活用して、じっくりと情報収集を行えば、皆さんのご家庭の状況に沿った解決策を見つけていただけるはず。

 

特に「家族全員で赴任するか」という問いに対する答えをぜひともみなさんなりに見つけていただきたいと考えています。このページでは、答えを見つけるための具体的な手順をご紹介します。

 

 

前回の記事では、あえて家族で開発途上国に赴任する際のデメリットからご説明させていただきました。なぜなら、海外では(先進国と呼ばれる国であっても)日本と同じような暮らしが担保されているわけではないからです。

「便利さ」「清潔さ」などを基準にすればむしろ、どの国で暮らしても、ほとんどの面で日本よりも生活環境は劣ると言っても過言ではありません。

 

・住宅環境

・衛生状態

・交通事情

・治安情勢

・生活費の水準(物価事情)

・現地の文化/風習/宗教事情

・教育環境

・周囲の住人との意思疎通

・日本との移動

 

といった項目を想像していただくだけでも日本の生活の方がよさそうだなぁ、とおもっていただけるのではないでしょうか?日本と全く同じと言えるレベルにあることはほとんどありません。

 

ということは、日本と全く同じレベルの生活を求めるのであればそもそも海外での生活は難しいということになります。しかしながら、生活水準だけではなく、ご家族の絆を強めたり、お子さんが日本とは違う環境で生活することなど、さまざまなメリットを考えられるならば、デメリットがあっても海外で家族揃って駐在するという選択肢が選べるようになるはずです。

長い人生、取り返しのつくことも多いですが、お子さんが成長していくプロセスを見守ること、同時に家族の絆を構築していくことはやり直しができない取り組みの一つ。このコラムシリーズを読んでいただき、家族揃っての海外駐在という選択肢を考えていただければ大変うれしく思います。

 

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家族で赴任するか判断するために役立つシート

海外で生活するということは、日本とは違った生活環境で生活するということ。そしてまた、日本のような衛生的で、快適で、時間の計算が立つ生活を離れるということでもあります。この快適さをある程度犠牲にする必要がありますが、ご家族で一定期間海外に駐在することで得られるメリットもあります。

 

特に開発途上国で暮らすという場合、不安の方が大きいと思います。そこでご紹介したいのが次のシート。これまで集めてきた赴任先の国・地域(都市)にご家族で駐在した場合に、どのような生活環境になるのかを整理できるものです。各項目について

 

◎:満足

〇:適応可能

△:やや不満

▼:不満だが我慢はできる

×:我慢できない

××:絶対に生活できない

 

といった評価をしていくことで、冷静に何が不安、不満なのかを割り出すことができます。

 

 

外務省のHPや、現地の日本人会のHPなどである程度生活の様子を想像してみましょう。繰り返しになりますが、海外のほとんどの国・地域では日本よりも快適な生活は保障されていません。▼よりも下の評価が多いこともたくさんあるとは思います。

 

ただ、パニックになって

 

「絶対に自分がそんな国で生活していけない」

「子供を連れて行くなんてとんでもない!」

 

となっているばかりではもったいないとも思うのです。

 

冷静に情報を整理し、どういった要素の不満が解決すれば、現地での生活が可能なのかを整理してはいかがでしょうか?赴任先の国・地域によっては××絶対に生活できない)という場所もあるかもしれません。またお子さんの年齢や介護が必要といった、個別の家庭事情を踏まえると家族揃っての赴任ができないという結論は変わらないかもしれません。

 

それでも日本国内だけでずっと働き続けられるわけではないこれからの時代、家族で暮らすためにどのような工夫が必要なのかを考える必要があるのではないでしょうか?工夫の具体的な中身を考える前に、どういった項目で工夫が必要なのかを割り出すツールが上のシートです。ぜひご活用してみてください。

 

 

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途上国の不便さを「軽減」する方法はある

さて、9つの項目に対して、6段階の評価を付けてみることをご提案しました。ご自身がこれまで抱いているイメージではなく、赴任先の国・地域の情報を調べてみて「これはちょっと…」と感じられるケースがあろうかと思います。特に「△:やや不満 ▼:不満だが我慢はできる ×:我慢できない ××:絶対に生活できない」という評価になった項目があれば、なおさらです。

 

開発途上国の現状を抜本的に改善し、各項目の状況を良くするのは個人ではなかなか難しいでしょう。そういった国家レベルの働きかけ、生活環境改善は国際機関やJICA(国際協力機構)などが一生懸命取り組んでくれています。例えば病院を建てたり、お医者さん・看護師さんを育てたり、治安を改善するために警察官を育成したり、といった協力が進んでいるのです。

南米パラグアイ農村部で衛生的な飲料水を住民が確保できるようにするための支援を検討中の写真。

 

ただし、こうした協力の成果が出るのは少なくとも数年~数十年先。皆さんの海外赴任には間に合いそうにありません。そのため、ご家族揃って海外に駐在するためには自分の力である程度工夫して、不満や不安を解消することが必要でしょう。

 

住宅環境が不満ならば、現地に行って家のオーナーに掛け合い、日本人が少しでも快適に過ごせるよう一部をリフォームすることも選択肢です。安心して食べられる食品が少ない、現地で日本料理に使える食材が購入できない、ということであれば、大型の冷蔵庫を自宅に設置し、日本に帰国した際にまとめて購入、保管するという工夫もできます。お子さんが学校に通う間に事件・事故に巻き込まれることが不安なのであれば、信頼できるドライバーさんを雇用して、学校まで送迎するという通学方法もあります(日本人学校によってはスクールバスを出している都市もあります)。

 

何が不安なのか、何が不満なのかわからなければ、漠然と「家族で一緒に海外で暮らすなんてできそうにない」で止まってしまいますが、具体的に不安、不満な項目がわかれば工夫のやり方も具体的にイメージできるようになります。

この項終わり