【概要】アメリカ国務省2018年テロ発生状況レポート

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テロの発生傾向がある程度認識できる

前のページで国務省報告書の概要をお伝えしました。

最後は同報告書の付録として公表されている統計情報(STATISTICAL INFORMATION ON TERRORISM IN 2018)に記載されている表を見ながらテロの発生傾向を読み解いてみましょう。

 

以下が国務省報告書付録に掲載されている攻撃主体者(perpetrator)別の被害者属性分析です。同じ「テロリストグループ」もしくは「過激派武装組織」でもその標的の傾向には大きな差が確認されています。

 

例えば、アフガニスタンを拠点とするタリバンは政府関係機関や軍を標的としており、民間人の被害が発生したのは全体の20%前後となっています。これに対し、ISISが実行したテロでは民間人が巻き込まれるケースが最も多く約40%に達しています。いずれもアフリカで活動が観察されているアルシャバーブとボコハラムも民間人を巻き込んだテロがより多いのはボコハラムであることがわかります。

 

これは各武装勢力がなんのために武力行使を行っているのか、またそのためにどのような戦術を採用しているのかに影響されると考えられます。アフガニスタンタリバンの最大目標は米軍を中心とする外国軍のアフガニスタンからの撤退であり、テロの標的も外国軍や外国勢力に支えられたアフガニスタン政府です。このため、民間人を直接の標的としてテロを実行するケースは少ないという結果になっているのでしょう。

他方で、ISISは同組織が認めたイスラム教解釈に基づく世界秩序の構築を目指しています。このため、キリスト教徒や仏教徒はもちろん、イスラム教のシーア派を含め、異教徒とみなした一般市民も含めて攻撃の対象としています。このため、ISISが引き起こしたテロに民間人が巻き込まれる割合はタリバンの約2倍多く、軍や政府機関を超えて最も被害が多く発生しているのが一般人という結果になっています。

 

全世界をまとめた傾向ですので、あくまで一般論にはなるのですが、こういった傾向を知っているか知らないか、滞在地域でどういった組織の攻撃を受ける可能性があり、その標的はなんなのか?を把握するだけでも皆さんの命を守れる確率は上がるのです。

 

この項終わり