緒方貞子さんから教えていただいたこと

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緒方貞子さんに仕えることができた幸せ

代表の尾崎です。

国際社会では日本人として圧倒的なご活躍をされた緒方貞子さんが10月22日、92歳の生涯を終えられました。安らかな眠りにつかれていることを心よりお祈り申し上げます。

 

緒方さんが国際協力機構(JICA)の理事長でいらっしゃった頃、幸運にも秘書チームの末端で働く機会を頂きました。秘書チームの一員と言うと格好がいいですが、実際には荷物を運んだり、パソコンの調整をしたり、外国からのお客様からいただいた調度品をお部屋に飾ったり、年末年始のグリーティングカードを準備したり…。端的に言えば「雑用係」でした。

 

それでも、世界中の要人と面談を繰り返し、日本人の枠を超えたお仕事をされてきた緒方さんと直接お話させていただき、折に触れてご経験を教えていただける立場に置かせていただいたことは大変光栄であり、同時に学びに満ちた時間でした。

 

大手メディアや各種インターネットニュースが報じていますので改めて緒方さんのご活躍ぶりをお伝えするつもりはありません。また、難民の保護や普段のお仕事ぶりについて、中身の濃いやり取りをされてきた方々の談話と比較すると尾崎の経験談など吹けば飛ぶようなもの。あえて文字にして公開するほどの価値はありません。

 

しかしながら、お亡くなりになって以降、緒方さんに使えさせていただいた時間を思い出して書き残しておきたいことが一つだけ浮かんできました。それは緒方さんが繰り返しおっしゃっておられたメッセージであり、そして海外での安全管理にも深く関わることです。

 

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緒方さんが繰り返し伝えられていたこと

緒方さんから教えていただいたことはたくさんありますが、一つだけ皆さんにもご紹介したいメッセージがあります。それは緒方さんが様々な場所で、様々な機会で、繰り返し伝えておられたことでもあります。

 

そのメッセージとは

 

 「昔と違ってヒト・モノ・カネ・情報すべてがあっという間に国境を超えるようになった。

 そんな時代に自分だけが良ければいい、自分の国だけが良ければいい、という考えが通用しますか?」

 

というもの。

 

 例えば日本国民の税金を用いて開発途上国の支援を行う意義を説明する時

 例えば紛争を解決したり、予防するために必要な取り組みを問われた時

 例えば全世界の要人が集まる国際会議での叱咤激励の際に

(世界中の要人に「叱咤激励」できるというだけでもすごいことですよね)

 

こうしたメッセージは繰り返し登場しています。

 

他の国・地域の人が困っているけど、自分には関係ないからいいや、

他人も困っているかもしれないけど、自分だって生活が苦しいんだ、

他の人がどうなろうが知らないが、自分が楽しく豊かに暮らせるほうがいい、

 

といった考え方とは正反対。世界が密接に結びつく、「グローバル化」の時代だからこそ他人や外国と協力し合い、人間一人一人が安心して暮らせるように全員で努力しなければならないというメッセージです。全員が努力しなければどうなるか?緒方さんがおっしゃっていたのは、

 

「(自分優先、自国優先主義は)短期的には得をするかもしれないけれども、いずれはしっぺ返しを食らいます」

 

という趣旨の言葉でした。例えば長年気にかけておられたアフガニスタンは世界中から「忘れられた国」になってしまったがゆえに、オサマ・ビン・ラーディンのような超過激主義者が同地を拠点としてアメリカ同時多発テロを引き起こすまでに至ってしまったと考えておられました。(緒方さんは2001年の同時多発テロ発生時にニューヨークにお住まいで、ご自宅からテロ現場から上がる煙などが見えていたともお話されていました)

日本から見るとアフガニスタンは遠い国ですし、何よりも「戦争とテロの国」としてのイメージをお持ちではないでしょうか?水道・電気・ガスがいつでも使え、公共交通機関も発達しており、コンビニ等でたいていのものは手に入ってしまう、そして何より戦争もテロもほとんどない日本で暮らしているとアフガニスタンの人の暮らしは「他人事」として捉えがちです。しかし、今自分たちがそれでいいからと言ってアフガニスタンの人々を支えなければいずれ2001年9月11日のような出来事に巻き込まれる結果になるかもしれませんよ、ということですね。

 

尾崎がこのメッセージをウェブサイトで皆様にもお伝えしたかったのは世界各地の出来事を「他人事」として捉えていてはマズい、と強く感じているからです。

 

【次ページでは・・・世界各地で起こっていることは「他人事」ではありません】