あなたの「リスク」はなんでしょうか?

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備えるべき「リスク」は人によって違う

当サイトでは日頃から「海外での安全管理」を重要性を訴えています。何気なく「海外での安全管理」と一言で表現してしまっていますが万人に共通して当てはまる安全管理手法というものはありません。それはなぜでしょうか?

 

答えは、人それぞれ抱えている「リスク」(被害を受ける可能性)が異なるからです。地球上には全人類共通の「脅威」(被害を受けうる要因)が多数存在しています。ただし、それぞれの「脅威」にどの程度影響されるか、は人によって(または組織によって)全く変わってきます。

 

例えば、現在であれば明らかに新型コロナウイルスはどの国のどの人にとっても「脅威」であることは間違いありません。しかしながら、同じウイルスに対しても年齢や基礎疾患の有無、生活・職業の違い、周辺の医療事情等によって命まで奪われるほどの「リスク」であるかは違ってくる、というのが現時点での知見です。

 

もっと極端な例を考えてみましょう。今このページを読んでいただいているあなたがマレーシアの国際空港で液体をかけられて暗殺されるリスクはいかほどでしょうか?

 

もし、あなたを暗殺することで、メリットが生じるグループがあるとすれば、そしてそのグループが暗殺も選択肢から排除しないような性質であるとすれば、話は別です。しかしながら、ほとんどの読者の方は某国の支配者一族が恐れなければならないような「暗殺リスク」は抱えていないはずですよね。誰かが皆さんを暗殺することそのものは可能ですので、「暗殺」という脅威はゼロではないと思いますが、皆さんに対する「暗殺リスク」は無視しても大丈夫ということになります。

 

逆の質問をしてみましょう。当サイトの読者の約8割を占める日本在住の方で、地震や台風に備えていない方はいらっしゃるでしょうか?お住いの地域によって、若干準備の度合いは変わるかもしれませんが、過去震災で大きな被害を受けた地域にお住いの方や、近いうちに大地震が発生するといわれている東海地区にお住いの方などは「地震リスク」に敏感でしょうし、毎年のように台風が通過するエリアにお住いの方は「台風リスク」に敏感であるはずです。

 

では、全世界どこにいても「地震」「台風」の脅威に備えなければならないか、と言われればそうではありません。ほとんど地震が起こらない国・地域もありますし、内陸国ではそもそも台風に類する暴風雨がやってくることはまずないでしょう。そうした国・地域にお住いの方であれば日本と同じレベルの「地震リスク」「台風リスク」への対応はそれほど必要ではないはずです。

 

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あなたにとって最大の「リスク」はなんでしょうか?

それでは、皆さんが海外に渡航される際、最大の「リスク」はなんでしょうか?渡航される国・地域によっても少しずつ変わってきますがたいていの場合は以下のような要因が列記できると思います。

 

individual-security-risk
一般論として海外に渡航する個人が直面しうるリスクを図示したもの。現在「感染症リスク」は多くの方が意識しているが、ほかのリスク要因はどうか?(海外安全管理本部作成)

 

これら想定される「脅威」の中で、みなさんがその国でどういった活動を行うのか、どういった資産を保有するのか、等を踏まえて、ご自身にとっての最大の「リスク」を想定してみてください。

 

例えば、ホテルや所属企業・団体の現地拠点以外に立ち寄らない、ということであれば一般犯罪リスクはそれほど警戒しなくてもよいかもしれません。逆に人の多い観光地で長時間滞在し、また一人で現地の村落をまわる場合には一般犯罪や性犯罪への警戒を高める必要があるでしょう。

 

皆さんご自身や所属企業・団体が資産として現地に金品、固定資産、販売用在庫等を大量にお持ちになる場合には、個人に対する脅威に留まらず、盗難や詐取の可能性も検討しなければならないでしょう。どのような資産を守る必要があるのかによって警戒の方法、手段もおのずと変わってくるのです。

 

前項でお伝えしたように、皆さんが海外に渡航される際、警戒すべき最大の「リスク」はおそらく「暗殺リスク」ではないはず。では、新型コロナウイルス感染症の影響が残る中、あるいはその影響が一定程度収束した後に海外でご活躍される皆さんご自身にとっての最大の「リスク」はなんでしょうか?

 

ご自身の状況、業務、渡航先等を踏まえてぜひ考えてみてください。

 

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「リスク」=発生頻度×被害の影響度

 

とはいえ、「考えてみてください」、と言われて考えられるようであれば苦労しないですよね。

 

 なにはなくとも感染症には絶対に気をつけないと!

 いやいや、一般犯罪も日本と比較してべらぼうに多いと聞いたな・・・

 話を聞く限り交通ルールが無茶苦茶で事故の危険もあるはずだ、

 到着した直後には無許可のタクシー運転手がたむろしているかもしれない・・・

 

なんてことを考え始めると皆さんにはかなり多くの脅威が襲ってくるように感じられるかもしれません。そして自分にとって影響の大きな「リスク」を考える判断軸を見失ってしまう方も多くおられます。

 

 

ということで、あなたにとっての最大のリスクを導き出すツールをご紹介したいと思います。それは「Risk Matrix」と呼ばれるリスクの分析表です。

 

売上=客単価×客数

人件費=エンジニア単価×工数

 

といった具合に、物事は掛け算に分解していくとわかりやすくなります。リスクの場合には、その要因の発生頻度とその要因が発生した場合に、自分が(もしくは企業が)受ける影響の深刻さの二つに分解し、総合的に最も被害が大きくなりそうなもの、すなわち「リスク」が大きいものを割り出す、という手法を使うと考えやすくなるはずです。

 

次のコラムでは詳しくRisk Matrixの使い方をご紹介させていただきますが、このツールを知るだけでも、皆さんご自身にとって最大のリスクがなんなのか導き出しやすくなるのではないでしょうか?

risk-matrix-format
一般的なRisk Matrixのフォーマット。発生頻度とインパクト(被害の大きさ)の掛け算を視覚化する

 

この稿終わり