危険回避後の「出口戦略」はあるか?

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帰任のタイミングは必須検討事項

安全管理上重大な緊急事態が発生した際、命を守るためには何はなくともその場を離れる、緊急的にその国・地域から避難するという方法を取らざるを得ないケースがあります。避難する際には、その他の検討事項を一切合切放り出して逃げることが重要ですが、ひとたび、安全な場所まで到達したらすぐにやらなければならないことがあります。

 

海外で事業展開をされている企業・団体であれば少なくとも以下の三つは速やかに検討を開始する必要があります。命を最優先にするタイミングをやり過ごしたなら、とにかく以下の三点に集中すべきなのです。緊急的な国外避難と「出口戦略」はセットなのです。(やや意味合いが違いますが、自粛を要請するならば、自粛に伴う休業補償を行わなければ生活が成り立たない、「自粛と補償はセット」という表現になぞらえています)

 

・現地で実施していた事業活動をどのように継続するか

・現地の事業拠点/保管されている財産等及び現地で雇用していた従業員の処遇

・避難した関係者を、現地に帰任させるタイミング(基準)

 

これらは国外への避難に伴う「出口戦略」の一部です。上二つのポイントもなかなか奥深いノウハウが必要なのですがこのコラムでは最後の一点をご説明しましょう。

 

大規模なテロや戦闘状態、政情不安等から命を守るためにはまず国外への避難。これは間違っていないのですが、そもそも何のためにその国・地域に事業拠点を設置し、駐在者や出張者を派遣していたのでしょうか?何かしら「やるべきこと」がそこにあるからではないですか?では、その「やるべきこと」は一時的なリスクレベルの高まりが収まった場合、なくなっているのでしょうか?現地に関係者を帰任させる必要はないのでしょうか?

 

現実は避難して終わりではありません。「やるべきこと」を達成させるためには事業を継続しなければならないはずです。現地に駐在していた方々がずっと日本や第三国で業務を継続するのでない限り、どこかのタイミングで帰任するという判断が必要です。安全を確保しながら関係者を帰任させるためには、「帰任できる」という判断の根拠をある程度決めておかなければなりません。そして、その根拠は避難を決定したタイミングの直後にある程度決まっていることが理想的です。

 

避難を決定したリスクの原因が取り除かれたと判断する根拠はなにか?

避難を決定したリスクが残る中、リスクを低減できる安全対策はなにか?

帰任した後に安全に移動できる範囲は何を根拠に決定するのか?

現地に帰任した後再度避難する際のトリガーはなにか?

 

関係者の避難直後からこれらの問いに対し企業・団体内で答えを出す努力をすることで、帰任のタイミングが見えてきます。

 

例えば日本政府外務省が危険情報を引き下げたというのは有力な根拠の一つになるでしょう。例えば、2019年4月にスリランカで発生した同時多発テロは事件発生から約2か月後に日本政府の危険情報が引き下げられています。

 

2019年4月時点で日本政府はスリランカ全土の危険情報をレベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)に引き上げ

 

2019年6月にスリランカ全土の危険情報はレベル1:十分注意してください。に引き下げ

 

日本政府よりもイギリスやアメリカ等他国政府が先にリスクレベルを引き下げることもありますので、複数の政府機関のリスクレベルを確認することも大切です。ただし、これらはあくまで皆さんの企業・団体とは別の政府組織のリスク評価です。帰任のタイミングはあくまで一つ一つの企業・団体が現地で「やるべきこと」の意味合い、また関係者の人数や活動実態を踏まえ、個別に検討する必要があるのです。

 

この項終わり