海外で犯罪被害に遭う日本人はどのくらい?

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海外は本当に危ないのか?

当サイトでは繰り返し、

 

安全管理が重要です!

海外では日本と同じように行動しては危ないです!

出発前から情報収集をしてください!

 

などと半ば脅迫のような説明を繰り返しています。

 

「海外安全、海外安全、と言っているけれども、

 そもそも本当に海外はそんなに危ないのか?」

 

という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

 世界一周して帰ってきた友人がいる

 同僚の家族は海外で駐在生活を満喫している

 何度も海外旅行に行ったが危ない目に遭った記憶はない

 

といった方は多いでしょう。

 

日本で報じられるテロや交通事故のニュースなどを見ていても「邦人の被害は報告されていません」といった補足説明がなされていることが多く、日本人が犠牲になる事件が毎日とめどなく発生しているわけではありません。また、実体験として危ない経験をしたか、そうでないか、によってもご意見が分かれるところだと思います。

今回は公表されている最新の統計を用いて、日本と海外とどちらがよりリスクが高いと言えるのか、検証してみたいと思います。

 

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旅行は本来楽しいもの。ただし、犯罪やテロ等に巻き込まれると悲しい思い出が残ります

 

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外務省が公表している「海外邦人援護統計」

真っ先に注目したいのは、実際にどのくらいの数の日本人が海外で大使館や総領事館等の支援を受けているか集計したデータ。各国の大使館や総領事館を管轄している外務省が「海外邦人援護統計」として発表しています。

このデータでは、外務省関係機関が実際に援護した日本人の数を集計している関係で、スリや暴行など、何らかの犯罪被害を受けても大使館等に報告や相談をしていない人は数に含まれていません。そのため、資料の注意書きにも

 

「本統計は,在外公館で把握している邦人援護事案のみであり,海外で邦人が関係した全ての事件・事故等を網羅したものではなく,海外で発生した事件・災害等の件数を表すものではありません。」

 

と記載があります。つまり、少なくともこれだけの日本人の方が被害に遭っていますが、実際に被害に遭っている方はもっと多いですよ、という意味ですね。

 

2020年10月時点で公表されている最新版は2018年度版の統計です。その最新版の統計でまず全世界で被害に遭った日本人の方の数を確認してみましょう。

mofa-crime-stats-2018

 

画像ではやや見づらいですが、2018年一年間でなんと22,349人となっており、これは過去10年間では最も多い数です。では海外に渡航した方全体の数は何人だったか、というと18,954,031人(2018年)となっています。この二つの数字から、おおよそ1000人に1人以上は海外で何らかの被害に遭っていると言えますね。

 

しかも、スリや詐欺のようにお金だけ取られる事件ばかりではありません。「殺人」「傷害・暴行」「強姦・強制猥褻」「脅迫・恐喝」「強盗・強奪」といった物理的に日本人の身体に危害が加えられた犯罪被害に遭った方の数だけを取り出してみても約424人。つまり、毎日1人以上、世界のどこかで日本人が身体への直接的な危害を受けているという計算になります。

 

繰り返しになりますが、この数字はあくまで被害に遭った上で大使館や総領事館に援助を求めた人の数です。実際にはこの数字以上に海外で危険な目に遭っている方は多いと思います。

日本人で海外に滞在している人のうち1000人に1人以上が、ことの重大さはさておきなんらかの不幸な事態に出会っているという事実。主観的な評価は別として、事実としてお伝えしておきたいと思います。

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国際的に比較してみると・・・

では、日本は外国と比べて安全なのか?と問われたらどうでしょうか?

いくつかのレポートが日本の安全性を示唆していますので、こちらも併せてご紹介したいと思います。

 

一つはInstitute of Economics and Peace が発表している「Global Peace Index (世界平和指数)」という指標。この指標は犯罪の発生率や暴力的なデモ、テロの発生率や件数のほかに治安当局の能力、核兵器の保有実態等までを指数化して総合的に評価したものです。最新版の平和指数では日本は163か国中9位となっています。

GPI-ranking-2020
世界平和指数(GPI)ランキングの上位国一覧。アイスランドが1位で日本は9位(全163ヶ国)

 

また、同じ組織が発表している「Global Terrorism Index(世界テロ指数)」というテロの脅威に特化したランキングもあります。こちらは順位が低いほうがより安全、ということになりますが、日本は同じ163か国中78位となっています。

 

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色の濃い国ほどテロのリスクが高い(出展 Institute of Economics and Peace)

 

同じ英エコノミスト誌の関連機関ではありますが、EIU(Economic Intelligence Unit)が発表している「Safe Cities Index」という都市別安全度合いランキングもあります。この調査にはNECも関係しています。

こちらのランキングを見てみると、なんと東京が世界で最も安全な都市として評価されています。日本で評価対象となったもう一つの大都市、大阪は第三位。つまり、都市別でみると、少なくとも世界の主要な都市のどんなところであっても、東京や大阪と比較すると安全ではない、という推測が成り立ちそうです。

 

safe-city-index-ranking-2019
東京も大阪も世界の60の都市を比較すると最も安全な都市と言える(出典EIU)

 

海外に駐在・渡航されている方の1000人に1人以上が大使館や総領事館に支援を求めている、ということ。また日本や日本の主要都市は世界の他の国・都市と比較して安全な環境であると評価されていること、を確認いただけたのではないでしょうか?

 

日本国内でも悲惨な事件や事故が日々発生しています。しかしながら、世界各地ではもっと多くの犯罪被害が発生しているのです。日本と同じ心構え、警戒レベルで世界に出てしまうと、たとえ先進国と呼ばれている国であっても思いがけない被害に巻き込まれかねません。海外に出発される前には日本と世界の治安状況のギャップを認識し、渡航先の状況に応じた警戒を行っていただくようおススメします。

この項終わり