「自分の身を守る」はグローバル人材の必須能力

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海外で活躍できる人材が増えないとどうなる!?

尾崎は日本人がもっと世界で活躍して欲しいと願っています。日本人が世界をよりよくするために活躍してくれるとなおうれしく思います。自己紹介にも書いてありますが、尾崎は国際協力業界で社会人としてのキャリアをスタートさせ、そして人間としても職業人としても大きく育てていただきました。ひょんなきっかけではありましたが、国際協力業界でパキスタンやアフガニスタンにおける安全管理業務を担当することになったことが今の私の礎になっています。

 

国際協力業界で特に途上国各地の実態を目の当たりにしながら暮らしているといかに日本が恵まれているか、を毎日痛感させられます。いつ銃弾や砲弾が飛んでくるか心配する必要もないですし、武装勢力の略奪におびえることも隣国による侵略が現実のものになる可能性もそれほど高くはないでしょう。あるいは直近ロシアで話題になっている徴兵は法律上起こりえません。また、基本的な医療/飲食料品の深刻な欠乏もごく一部の方を除けば生死に関わるとまでは言えません。

 

しかしながら今後の日本がこうした「恵まれた国」であり続けられるか、と言われると尾崎自身は疑問を禁じえません。特にこれから成長し、社会に飛び立つ10代の方、あるいはそれよりも若い方は生活すべてが現在と比べて先細る可能性も考えておかなければならないと思っています。

 

例えば次のグラフを見てみましょう。極めてシンプルな日本の年齢別人口推移をまとめたものです。出典は「老後2000万円問題」で話題になった金融審議会市場ワーキング・グループ報告書(「高齢社会における資産形成・管理」 )です。

 

 

いかがでしょうか?一目見て、人口が減っていく、高齢世代がマジョリティになる時代がすぐそこに来ていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。1900年代までは日本も人口が増え続けており、若い人たちが多かったこともあり世帯数が増えていました。そのため日本人向けの製品を作り、日本国内で売っていても購入してくれる人も多かったのです。

 

しかしながら、上の図を見ていただければこれまでと同じような日本国内完結型の事業活動が成り立たないことがお分かりいただけるはずです。商品を製造したりサービスを提供する量を減らすというのも一つの選択肢ですが、それでは縮小均衡になってしまい労働力世代はますます貧しくなってしまうでしょう。

 

これまでと同じか、もしくはそれ以上に快適な生活を求めるならば日本人・日本企業が世界に出ていくことが求められますね。そして海外に進出する意味合いもこれまでであれば「規模の拡大を優先して海外に」という面が強かったかもしれませんが、今後は個人も企業も「生き残りをかけて海外への展開を!」という状況になるのではないでしょうか?そうなると海外で活躍できる人材か否か、が今以上に問われることになるのは必然です。

 

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海外で活動する前提条件は自分で自分の身を守ること

生き残りをかけて日本企業が海外に進出し始めるとどういうことが起こるでしょうか?実際に世界各地で生活する日本人が増え、日本とは違う環境で仕事をする機会が増えるということです。

 

しかしながら、世界各地に新しい事業拠点を作るというのは日本国内に支店を増やすのとは全く次元が違います。日本国内であれば言語も同じですし、基本的な生活ルールも同じ。水道・ガス・電気や通信回線、交通網に至るまで、本社周辺と同じ環境が既に揃っているはずです。また、よほどのことがない限り本社所在地と治安面で著しく対策を変える必要などありません。新しい支店に赴任する従業員皆さんに対して、危機管理の面で特別な配慮をする必要はまずないと言えるでしょう。

 

しかしながら、これが海外に従業員/関係者を派遣するとなると話は全く別物です。まず言葉が違います。食べ物も飲み物も日本と全く同じというわけにも行きません。生活インフラも日本と比較すれば信頼性が低い国・地域もあります。

また海外では治安情勢も日本では想像できないような状況が発生し得ます。銃を用いた強盗事件は日本全国滅多に起こりません。銃がほとんど流通していない日本では銃への警戒は不要ですが、ではアメリカをはじめとする世界ではどうでしょうか?相手が銃を持っていることを前提として行動することが自分の身を守るための第一歩、という国・地域もあるのです。

国によって統計の手法・精度が異なるため単純比較はできませんが、日本はそもそも犯罪発生率が低い国です。スマートフォンや財布を飲食店のテーブルに置いて出歩き、しばらくして戻ってきてもそのまま、というのは尾崎が知る限り日本くらいです。世界各地ではたとえ治安が比較的安定している東南アジア諸国でも放置されている金目のものはさっさと持っていかれるでしょう。

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世界各地の大使館、領事館に支援を求めた日本人の数。「海外邦人援護統計」の最新版によれば、パンデミック拡大前の2019年は21,000人以上を日本政府が手助けしている

実際に統計を読み解いてみると

 

 海外に渡航された日本人のうちおおよそ1000人に1人が海外で犯罪被害に遭っている

 日本人は少なくとも一日に1件以上身体に直接的影響のある犯罪被害に遭っている

 

ということが推測されます。

 

さらに、日本では意識すらしていない危機的状況に見舞われることがあります。例えば、冒頭事例に挙げた新型コロナ関連のデモや各国の反政府デモ。日本ではデモと言えば一部非常に強い主張をお持ちの方が霞が関周辺で行うやや「マイナー」な行為。実際に発生していてもシュプレヒコールを上げる集団が警官に囲まれながら歩いている程度ですので、当たり前のように横を通過してしまうと思います。

 

しかしながら海外では数万人~数百万人規模の抗議行動が日本とくらべものにならない頻度で発生しています。規模の大きな抗議活動では参加者の一部が暴徒化したり、治安当局が催涙弾やゴム弾、場合によっては実弾を発射して鎮圧します。万が一そうした衝突地点にご自身がいたとしたら?全く抗議活動に無関係であっても何らかの被害は免れません。

【参考コラム】警戒すべきデモの条件~香港民主化デモを題材に~

長々とご説明してきましたが、海外で生活する、海外で事業活動をするというのはこういう世界で生活するということです。日本国内の常識をそのまま海外で適用することはできません。「教えてくれなかったから危険な目に遭った」「誰も守ってくれなかった」と言っても後の祭りです。自分の安全は自分で守る。これが海外に渡航する際の絶対的前提条件。

どれだけいい仕事ができる方でも、志高く世界に貢献しようとしている方でも死んでしまってはそれ以上何もできません。海外で長く活躍するため、そして皆さんの取り組みを継続するためには自ら身の安全を確保し、生き残っていただかなければならないのです。

 

尾崎を含む当サイトのメンバーが世界各地の治安情報を発信する理由は、自分の安全を自分で守っていただく一助になりたいからです。決して我々は危機感を煽り、不安に付け込みたいわけではありません。真に世界で活躍できる「グローバル人材」となる大前提として志半ばで斃れて欲しくないという願いがあるからです。

 

まず、世界各地で何が起こっているのか、日本語ニュースだけを読んでいてはわからないことを知らなければ世界各地で活躍し続けていただくことができないのです。

 

我々のウェブサイトや関連のフェイスブックツイッター等で発信している情報を読んでいただいた皆様にはぜひ

 

危ないから海外に行かない

 

ではなく

 

海外でやるべきことがある、だから生き残るために自分の安全を確保する

 

という発想で日々の業務に役立てていただければと考えています。

この項終わり