委託先への丸投げは「人質」を取られること

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安全は「人質」に取られてはいけない

さて、このお話、なぜ尾崎が怖いと感じたのかを最後にご説明しましょう。

 

一連の新型コロナウイルス感染症でデジタル化、IT化の遅れが浮き彫りになったこともさることながら、日本の政府や自治体、あるいは民間企業が自分たちの活動を外部企業のコントロール下にあるシステムを用いているということが怖かったのです。内部関係者が仕組みを理解できていない、あるいは改善しようとしても「人質」に取られて希望通りの修正・新規開発ができない、という状況なのですから。

 

天候だったり、世界的な景気の循環であったり、はたまた戦争等の影響であったり、と組織の運営上、自分たちでコントロールできないことはいくつもあります。しかしながら自分たちの組織で活用している内部システムを外部の企業に「丸投げ」するのは文字通り事業運営そのものを「人質」に取られていると言っても過言ではありません。一般論ではありますが、毎日のように業務で使用する仕組みを外部に依存していては機動的な経営判断や業務改善などできるはずがないでしょう。

 

ただ、システムやITの話であればまだ恐怖感が最高レベルとは言えません。一連のデジタル化の遅れが問題として表出した事例はいくつもありますが、そのことが原因で直接的にどなたかが死傷したという事例はないハズです。あくまでパソコンやスマートフォン、サーバー上の問題であって人間の体に直接被害が及ぶ話ではないからです。

しかしながら、私が普段あちこちでお話を聞いている限り、安全対策を「丸投げ」している企業・団体もよく見かけます。

 

 うちは○○と契約して情報もらってるから大丈夫

 万が一何かあっても保険に加入しているから

 最後は外務省さんがなんとかしてくれるんでしょ?

 

といった自社の内部に安全管理人材はいなくても大丈夫だろう、というお話を聞くたびに、「うーん、そうじゃないんだよなぁ」という想いを禁じえません。新型コロナウイルス感染症のように全世界同時並行で関係者を日本に退避させるような事態で本当に契約先が全関係者の安全を確保してくれるのでしょうか?あるいは、セキュリティ会社から提供される情報を自社の関係者の海外事業活動実態に合わせて読み解き活用できているのでしょうか?

このままではマズい、という漠然とした不安感をより明確に言葉にするならば

 

 「安全対策を外部企業(セキュリティ会社や保険会社等)に丸投げするのは関係者の安全を「人質」に取られているようなものですよ!」

 

と踏み込んでお話すべきなんでしょうか。新型コロナウイルス感染症に伴うデジタル化の遅れと日本政府トップから中小企業に至るまであちこちで急に慌て始めている状況を見ていると、尾崎は怖さを禁じえません。海外で活躍する人間の命が失われてからでは遅いのです。システムやIT分野もさることながら海外に人材を派遣する際の安全対策は一定レベルまで自社内で取り組めるようにしておくべき、という尾崎の主張を改めて訴えたいと思います。

 

この項終わり