未来予測よりも重要なこと

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予測困難な事態が多発する時代

2020年、早くも1月が終わろうとしています。今年はお正月早々アメリカとイランが一時戦争か!?という状況になりました。両国の対立が収まったかと思ったら次は中国から感染が拡大した新型コロナウイルス感染症の影響が世界的に広がっており、混乱が続いています。

 

当サイトではテロや犯罪はある程度リスクの高まりを予測できるというお話を繰り返しています。他方で、国家同士の対立や新型感染症の拡大は、その帰結がテロや犯罪に比べ予測することが極めて難しいという性質があります。そのため、もしお客様から「この後どうなりますか?」とご質問を受けたとしても、明確な回答はできません。むしろ(正確に読み解けるかどうかわからにのに)明確な回答を行う方がお客様に対し誠意を欠いた対応と考えます。

1月8日付日経新聞電子版の見出し 先が読めず、万が一の際の影響が甚大ならば「ひとまず逃げる」が無難な対応

 

今の時代、戦争やテロといった人為的なリスクはもちろんのこと、人間がコントロールしきれない要素が多い自然災害や新たな感染症等、予測ができないリスクもかなり増えています。トランプ米国大統領がこれまでの政治家とやや違う対応をとる傾向にあること、また気温の上昇や降雨量の地球規模的な変化などにより、過去の経験則が通用しない時代になっていると言えるかもしれません。

 

つまり、リスクの全貌を予測しきれない状態で、安全対策を講じなければいけない時代になっているといえるのではないでしょうか?

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正確な未来予測がなければ安全対策はできない?

我々がお客様からのご相談を伺う中で、非常に多い質問が

 

 ・(特定の国)のリスクは今後どうなりますか?

 ・(特定の事件の後)世界でどんな出来事が起こりますか?

 ・(想定されるリスクについて)どの程度拡散しますか?

 

といった未来予測に関する問い合わせ。その質問にだけ回答しようとすると答えは常に同じ「わかりません」に帰結します。なぜその国で想定されるリスクがこれなのか、なぜこの事件の余波が世界各地に及ぶのか、といった背景を説明することは可能です。なぜならこれは既に起こったことの組み合わせだからです。

未来についても過去の延長線上と考えればいくつかのシナリオを想定することはできます。ただし、それらがどの程度の確率で発生するのか、また新しいシナリオが生まれるのか等正確に読み解くのは至難の業。これがわかる風に解説する方も多くいらっしゃいますが、セキュリティコンサルタントは占い師や予知能力者ではありません。(いないとは思いますが)未来のことが分かるような発言をして、断定的な判断をするコンサルタントがいれば、むしろ事態の複雑性を理解していない証拠と言ってもいいくらいです。

 

セキュリティコンサルタントは占い師でも予知能力者でもない

 

正確な未来予測ができるとは言えないセキュリティコンサルタントが、なぜ安全に対するアドバイスができるのか、そして一般の方よりも安全度を高める方法を複数提示できるのか?それは正確な未来予測がなくてもできてしまう安全対策のコツを知っているからです。

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どんなことが起こっても対応するための「頭の体操」

セキュリティコンサルタントというと、あたかもスパイのように機密情報をたくさん持っており

 

 いつ

 どこで

 だれが

 どうやって

 どんな事件を起こすのか

 

などがよくわかっているからこそ、安全対策ができると思い込んでおられる方が時々いらっしゃいます。正確に未来予測ができるからこそ、的確な安全対策のアドバイスができるのだろう、と。

 

実際には上記のような情報がわかっているのであれば安全対策のアドバイスなどやっている暇があったら事件が起こらないよう未然に防ぐのが正しい人間というものでしょう。それがわかっていてなお安全対策アドバイスを有料で提供しているのであれば、もう実行犯の一味といっても過言ではありません。

 

 

話を元に戻します。今の複雑な世の中で正確な未来予測ができる人はいません。ただし、起こりうる最悪の状況を想像することはできます。本当に最悪の状況が起こるかどうか、はわからなくても、「頭の体操」はできるはずです。そして、最悪の状況でも場合に関係者の被害を最小化する取り組みを進めることもできるはずです。セキュリティコンサルタントとして皆さんの安全対策をアドバイスする立場に必要なのは、正確な未来予測よりもシナリオの想定とその対応策のイメージです。

 

安全対策という分野に限ると特殊な能力のように思われがちですが、日頃の企業活動に置き換えて考えてみると実は皆さんの日常的な業務にも似ています。

 

 ・取引先の支払いが滞った場合の対応策は?

 ・景気の急激な落ち込みでも耐えられる財務体質にするには?

 ・2つの投資先のリスクとベネフィットを検討し、良い方に投資する

 ・突然アクティビストから株主提案が来た場合の防衛策は?

 

こういった経営上のリスクを想定し対応策を事前に用意することと、海外で発生しうる事態に備えた安全対策を講じることは基本的には同じ。ただ、海外の安全対策においては、皆さんが普段考え慣れていないというだけです。

 

イランとアメリカの対立や新型コロナウイルスの感染拡大、ISISによるイスラエルへの攻撃呼び掛け、11月のアメリカ大統領選挙を巡る情勢等、今年も世の中には不透明感が漂っています。しかしながら正確な未来予測がないと何もできない、と立ちすくんでいては、危機が現実になったとき太刀打ちできません。どのような事態が起こったとしても、皆さんが守るべき関係者の命や重要な企業資産を守り抜くために頭の体操を行うことが一番大切なのです。

 

アメリカの著名な投資家チャーリー・マンガ―は2002年、バークシャー・ハサウェイの株主総会でこんな発言をしています。

 

  「みんな計算ばかりして、考えていません」

  (People calculate too much and think too little)

 

安全対策にもこの言葉は当てはまるのです。未来予測よりも、最悪に備えた頭の体操です。

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