2024年版グローバルテロリズムインデックス概説

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グローバルテロリズムインデックスとは

オーストラリアに拠点を持つInstitute for Economics & Peaceという団体が毎年発表しているGlobal Terrorism Index(グローバルテロリズムインデックス)という指数があります。これは世界各地で発生したいわゆる「テロ」に分類される事件の数や被害規模を指数化して、ランキングしたものです。

このインデックスの特徴として

 ・世界中のほとんどすべての国・地域が評価されること

 ・同じ基準に基づき、国別に0~10の間で指数が算出されること

 ・毎年発表されるため指数の変化や順位の変化が見えやすいこと

 ・色分けされた地図が公表されるため、本文を読まずともテロ危険度が把握しやすいこと

などが挙げられます。

 

このインデックスの最新版となる、2024年版が3月6日付で公表されており、こちらからダウンロードが可能になりました。全体で約100ページの英文レポートとなっており一般の方が通読するにはちょっと大変かもしれません。当サイトでは例年最新版が発表されるたびに内容を確認し、過去分とも比較した上で、概要をお伝えしていますので以下是非ご一読下さい。

 

なお、2018年版から各国のランキング順位の変動が明記されるようになりました。代表の尾崎は2016年から

 

「テロリズムインデックスの各国順位の変動、特に急に順位が上がった国ではそれまで起こらなかったような大きなテロが起こることが多い。『アノマリー』ではあるものの、先行指標として有効かもしれない」

 

と発言していました。本稿の最後にランキングが急上昇(インデックスが悪化)しており、リスクの高まりが示唆されている国を挙げます。

ランキング順位の変動が明記されるようになった2018年版
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2024年版報告書の概要

まず目につくのは、世界全体でのテロによる死者数は2023年一年間で8,352人であり、前年2022年と比べ22%増となったという報告です。他方で、テロの件数は一年間で3,350件となり、昨年2022年から20%ほど減少しています。この二つの数字から考えればテロ一件当たりの死者数が増加しているのはあきらかであり、より多くの人間を死傷させるテロが増えていると言えます。特に2023年10月7日に発生したパレスチナ系武装勢力ハマスによるイスラエルでのテロはこの一件だけで死者数1,200名が加算されています。

ちなみに、2022年Global Terrorism Indexで指摘されていた。テロ1件当たりの死亡者数は1.7人です。2023年の統計によればテロ1件当たりの死亡者数は2.5人ですので、前年の46%増です。2021年版では1.3人でしたのでこの2年でテロ1件当たりの死者数はほぼ倍増している計算になります。2年連続でテロ1件当たりの死者数が増加しており、テロ事案がより致死的になっている傾向がより一層強くなっていると解釈できます。

過去数年間、組織別のテロ実行数トップだったグループはアフガニスタンタリバンでしたが、同組織は2021年8月以降アフガニスタンでの権力を事実上掌握、現在はタリバンが「統治する側」に回っていますのでテロの実施主体としてはカウントされていません。このため本年もIS系組織がテロ実施主体別のテロ実行数ではトップとなっています。特にシリア及びアフガニスタンでのテロ実行数が多いのですが20か国でISが犯行声明を発したテロが報告されています。

IS系組織に続くテロ実施数が多いグループはアルシャバーブ(ケニア等)やバロチスタン解放軍(パキスタン)、イスラム教及びイスラム教徒の守護者(JNIM、マリ/ブルキナファソ等)、ボコ・ハラム(ナイジェリア)となっています。

 

世界全体から見れば、西洋諸国でのテロ発生件数や死者数はそれほど大きな割合を占めているわけではありません。しかし、だからと言って欧米を含む先進国でテロの心配をしなくていいわけではありません。一人以上の死者が発生した国はこの3年間41~44カ国となっています。この数は2015~2019年と比べればかなり少なくなっているように見えますが、2004年と比べれば依然大きく再度増加する可能性があるからです。

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テロが原因で一人以上の死者が発生している国の数(弊社作成)

また、本年の報告書で非常に印象的なのはイラクがテロ発生件数の上位10か国から外れたという事実です。2023年の一年間で最もテロの影響を受けた国はブルキナファソであり、これはグローバル・テロリズム・インデックスが発表され始めて以来初めての事です。2位はイスラエルでありこれは昨年10月7日以降パレスチナ系武装勢力の活動が活発化していることが統計的にも示される結果となりました。全体的にテロのインパクトが大きい地域は中東からアフリカ中央部に移行しているトレンドがうかがえます。

 

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ご参考までに2023年版インデックス上位10か国は次のとおりです。イスラエルを除きトップ10入りしている国の顔ぶれは2022年と大きくは変わっていませんが、イラクがトップ10を外れた(11位)他、アフガニスタン、ソマリアが2022年版と比してランキングを下げている(テロの被害状況が相対的に改善している)こと、ブルキナファソ、マリ、パキスタンがランキングが上がっている(テロの被害状況が相対的に悪化している)と言えます。

1位 ブルキナファソ(昨年2位)

2位 イスラエル

3位 マリ(昨年4位)

4位 パキスタン(昨年6位)

5位 シリア(昨年5位)

6位 アフガニスタン(昨年1位)

7位 ソマリア(昨年3位)

8位 ナイジェリア(昨年8位)

9位 ミャンマー(昨年9位)

10位 ニジェール(昨年10位)

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当サイトが注目するテロの傾向

ロシア/ウクライナあるいはイスラエル/パレスチナのような事実上国家間紛争に近い状態に陥っている国への渡航を控える方は多いと思いますが、それ以外の国に海外渡航する際、テロを警戒している方はそれほど多くないのではないでしょうか?前述の通り、テロ件数そのものはここ数年減少傾向にあると言っても差し支えありません。ただし、テロ1件当たりの死者数が過去2年で約倍になっていることを考えれば、ひとたびテロに巻き込まれた場合命を落とす可能性があるという事でもあります。特に注意しなければいけないのはアフガニスタンやイラク、ソマリアといった皆さんがまず行かないであろう国での被害改善(テロインデックス改善)が報告書の見出しとなる世界全体の統計に大きく影響しているという点です。つまり、アフガニスタンやイラク、ソマリア等過去にテロの死者数が多かった国・地域に滞在されない方にとってはテロの死者数減は額面通りには受け取れません。

今年の報告書の中でも「2024年には欧州でのテロが増加する可能性がある」と明記されています。これはイスラエルとパレスチナ系武装勢力の衝突が継続する中で、イスラエルを陰に陽に支援する西側諸国(含むアメリカ)に対する反感が大きくなっていることが明確だからです。特にフランス政府は2024年3月25日に自国内のテロ警戒レベルを3段階中最も高いレベルに引き上げ、警戒を強めています。

 

また、冒頭ご紹介したように、当サイト代表の尾崎はグローバルテロリズムインデックスの各国ランキング変動やその他各種治安情勢を踏まえて、近い将来どういった国が危険か毎年検討しています。残念ながら警戒していた国で大きな事件が発生することもありますし、注意して情報を集めていたものの特段なにも起こらなかったという国もあります。

 

ご参考までに当HPが考える向こう一年間のテロ要警戒地域、またテロ発生傾向を提供します。

 

・インデックスの順位が上がっている国のうち治安に関係する情報などを踏まえ特に注意が必要ではないか、と当サイトが考える国はウガンダ(46位⇒27位)、バングラデシュ(43位⇒32位)、ベルギー(59位⇒51位)

(ブルキナファソあるいはイスラエルのような大規模なテロが次々と起こるという意味ではない。小規模ながら現在の警備状況では防ぎきれない無差別テロなどによって、一般人に被害が発生しても驚かないという意味合い)

・上記の他、特にインデックスの順位が悪化している国はアンゴラ、コソボ、中国、アルメニア等

・隣国との紛争や自国内での民族的/宗教的対立が発生している地域ではテロへの警戒を下げる理由がない。現在大きなテロが発生している国・地域はいずれも紛争がテロ続発のトリガーになっていると言える

・昨年から継続している世界的インフレは経済格差の拡大に直結しうる。孤立を深めた貧困層など過激派に参加しやすい層も生まれている点に十分注意

・ウクライナからの避難民や経済的背景から移民/難民が増えれば極右による過激な活動が一層活発化することも想定される。西洋諸国を中心に過去数十年とは傾向の違うテロ被害が深刻化しても不思議ではない

・ヨーロッパ及び欧米では引き続き銃の乱射や車両の突入といった「誰でもできてしまう」単独犯によるテロへの警戒を解いてはいけない。過激派組織、国際テロ組織に属さない犯行主体によるテロが増加している点要注意

 

最後に一点目で指摘した要注意国に対し、日・米・英・豪各国がそれぞれの国民向けにどのような旅行前アドバイスを提供しているかまとめたぺージのリンクをご紹介しておきます。

 

ウガンダ治安最新情報

バングラデシュ治安最新情報

ベルギー治安最新情報

 

弊社では過去のGlobal Terrorism Indexレポート及びその別冊をストックしています。皆さんが進出済みあるいは今後進出予定の特定の国・地域ごとのインデックスの経年変化、直近のテロ発生傾向、今後の要注意点等を取りまとめて提供することがも可能です。海外展開中の国・地域のリスクが気になる方や、ポストコロナの新たな海外事業展開を計画中の方、進出先候補を比較検討されている方などには是非ご活用頂きたいサービスです。

簡易な分析であれば一か国54,000円(税別)から承ることが可能です。ご要望の方はコチラの問い合わせフォーマットよりお気軽にお問合せ下さいませ。

この項終わり