予測できるリスクを避ける(リスクカレンダーのご紹介)

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2019年後半 リスクを伴うイベントリスト

2019年後半に治安や政情不安のリスクが高まりそうなイベントをカレンダーから抜き出してみましょう。

 

1)ムハッラム(イスラム教暦の第一月)

8月31日頃~9月中旬までの一か月間、イスラム教の暦では新年最初の月を迎えます。この月はラマダン(イスラム教の暦の9番目の月)に次いで神聖な月とされており、宗教行事が多数行われます。宗教心の高まりを利用したテロの呼びかけや、イスラム教の他宗派行事への攻撃などが過去に発生しているのでご注意ください。

 

2)アシュラ

9月9日ごろ(ムハッラムの10日目)に予定されているアシュラはシーア派信者にとって非常に重要なフサインの命日です。シーア派の宗教行事が多数が行われるため、注意が必要です。

 

3)9月11日アメリカ同時多発テロ発生日

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロは国際テロ組織アルカイダが実行した多くのテロの中でも最大級の被害が発生しました。テロ組織からすれば、「成功」事例であり、この日を記念した類似の犯行を計画する可能性が否定できない一日と言えます。

 

4)アルバイーンもしくはチェヘラム

10月19日ごろ、フサインの死亡後40日目(アルバイーンはアラビア語で40の意味)を意味します。日本の仏教では故人の命日から49日目に供養を捧げますが、それに似て、イスラム教では死後40日目に再度追悼を捧げることが一般的です。アルバイーン(チェヘラム)はシーア派にとって重要なフサインの40日忌ですので、これまた重要な宗教行事。イランやパキスタン等シーア派が多い国では、信者が多数集まり、行列をなして歩きながら鎖で自らの体を打つ(フサインの痛みを共有する)といった行進も行われます。

こちらはモスクではなく、路上で行われる行事ですので警備も比較的難しく、反シーア派グループの攻撃が何度も発生しています。こうした行進には近づかないことを強くおすすめします。

 

5)トルコ共和国記念日

1923年10月29日、トルコの建国が宣言された日です。トルコという国家にとって非常に重要な一日であるがゆえに、反トルコ政府活動を行うグループにとっては、この日にテロを成功させれば存在感を強く示すことができる日とも言えます。

本年2019年はISが新たに「トルコ支部」の設置を宣言したビデオを公開した年でもあります。新しい武装過激集団の一番のアピールは衆目を集めやすい日に、目立つテロ攻撃を実施すること。7月下旬の現時点では確たる情報はありませんが、今年のトルコ共和国記念日やその他何等かトルコでのイベントに標的を合わせたテロは排除しきれない状況です。

 

6)クリスマス

言わずと知れた世界的に有名な宗教行事です。

イスラム教の過激派から見れば自分たちを攻撃している「異教徒」の宗教行事であり、世界的にもシンボリックであるため、攻撃の対象として大義を説明しやすく、また被害が大々的に報道される可能性が高いので、攻撃の優先度も高いイベントです。

また、多くの人がやや浮かれた状態で一か所に集まることから治安当局からすると警備の難易度も高めです。実際に、2016年のベルリンクリスマスマーケットテロでは12名が死亡、約50名が負傷するという事件が発生しています。イギリスでも2017年のクリスマスにテロを計画していた容疑者が逮捕されています。今年も油断は禁物です。

 

2016年ベルリンのクリスマスマーケットに突入した40トントラック(出典:BBCのHPより)

 

この項終わり