車両の中にも「非常用持ち出しカバン」を!

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移動中のリスクは高い

海外でテロや襲撃に巻き込まれる場合、どこで巻き込まれる可能性が高いでしょうか?

 

 自宅やホテルのような宿泊先?

 現地事務所/支社や倉庫等の勤務場所?

 街中のレストランやショッピングセンター?

 市内や都市部から郊外への移動中?

 

さまざまなケースが想定されますし、滞在されている国や地域にもよりますが、自宅やホテルのように一般的に外壁が強固な場所はそれなりに安全性が高いです。同じようにオフィスビル等に入居している場合の現地事務所/支社や倉庫、一定以上の警備がなされているレストランやショッピングセンターなども守りが比較的固く、よほど大規模なテロ攻撃、襲撃が実行されない限り、被害は発生しづらいといえます。

 

高く強固な壁を複数の警備員が守っている場合、十分な武器弾薬と戦闘訓練を受けた人間が複数いないとテロや襲撃は外壁で防がれる

 

他方で、市内や都市部から郊外への移動時はどうでしょうか?読者の皆さんがアメリカ大統領や日本の首相と同等の防弾車を使うことができ、警備の車列を用意することができるのであれば話は別ですが、通常は一般車両のまま移動されるのではないでしょうか?つまり薄い金属の車体以外に守ってくれるものはありません。まして、徒歩の場合は皆さんご自身がむき出しの状態で移動していることになるので、近傍でテロ等が発生した場合、逃げる以外に身を守れる術がありません。

 

万が一テロや襲撃に巻き込まれた際のダメージが最も大きいのは移動中なのです。加えて、テロや襲撃、そして誘拐を実行しようと計画する側に皆さんが狙われた場合、いつ犯行に及ぶのが合理的でしょうか?移動情報が事前にわかっている(襲撃する場所を定められる)のであれば、障壁となる物理的な防御設備が少なく、またその強度も低い車両や徒歩での移動中の犯行が最も容易なはずですね。

 

つまり、海外でのテロや襲撃への備えは各拠点(宿泊先や事務所等)以上に移動中の警戒が重要なのです。過去当サイトでも安全な移動を確保するための方法についてわかりやすくコラムでご説明させていただきました。

 

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「非常用持ち出しカバン」という備え

本来強固に守られているはずの宿泊先や事務所に多く備わっているもの、それは「非常用持ち出しカバン」です。また、より規模の大きな事務所であれば数十人分の飲食料や簡易トイレなどの備蓄品も確保されているかもしれませんね。

 

宿泊先や事務所の周辺でテロや襲撃が発生し、急いで逃げなければならない場合、パッとつかんで走り出すことができる「非常用持ち出しカバン」があると大変便利です。襲われてからもろもろの荷物を詰めていると、逃げ遅れてしまう可能性もありますからね。

 

この「非常用持ち出しカバン」日本人にとってはなじみがあるのではないでしょうか?そう、地震や台風といった自然災害に備えて皆さんも用意されているものです。日本政府内閣府も「災害に対するご家庭での備え」というページで非常用持ち出しバッグに入れておくべきものリストを公開しています。

内閣府のHPより抜粋

 

 

海外に数日を超えて滞在する場合には万が一に備えて「非常用持ち出しカバン」を準備することを推奨します。まだお手元に用意ができていないのであれば上に示した内閣府の案内や以下のようなリストを参考に準備してみてはいかがでしょうか?次のリストは2017年夏、北朝鮮のミサイルが飛来する可能性が噂された際、グアム政府が住民に準備を呼びかけた「非常用持ち出しカバン」の中身一例です。

 

1.常時携帯すべきもの
・携帯電話と充電器
・家族の連絡先、避難&集合計画
・手回しラジオもしくは電池式ラジオ
・保険証のコピー
・薬の処方箋のコピー
・家族の医療記録(母子手帳やお薬手帳等)
・その他重要な書類
・トランシーバー

 

2.絶対に必要な物資
・現金
・救急セット
・服用している薬
・一人当たり約4リットルの水
・7日分の食料(缶詰、野菜、肉等)
・缶切り
・懐中電灯と電池
・ろうそくとマッチ
・レンチとペンチ
・毛布
・日焼け止め、虫よけ
・ビニール袋、ガムテープ
・予備のメガネもしくはコンタクトレンズ
・非常用の呼子笛

 

3.場合によって必要な物資
・ポータブルのガスコンロ
・紙製のコップ、お皿
・使い捨ての食器類
(当HP追記:ラップ類も便利です)
・ウェットティッシュ
・着替え
・雨具
・丈夫な靴
・子供が安心できるもの(ぬいぐるみや毛布)
・ペット等に必要な物資

 

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車両の中にも「非常用持ち出しカバン」を!

 

日本人の皆さんであれば自然災害への備えとして「非常用持ち出しカバン」を宿泊先や事務所に用意することはそれほど違和感がないかもしれません。用意周到な方は既にご用意されているかもしれませんね。

 

しかしながら、最初のページでお伝えしたように、テロや襲撃、誘拐に最も脆弱なのは移動中です。強固な壁もなく場合によっては皆さんご自身に直接暴力行為を行うことも可能なシチュエーションだからです。複数の壁に守られた状態では万が一に備えた「非常用持ち出しカバン」を用意されている方もおられるでしょうが、最も弱い移動中のタイミングでも用意していますか?意識すらしていなかった、という方もおられるかもしれませんね。特に移動中にテロや襲撃に巻き込まれる可能性がある国、外国人を標的とした誘拐が発生している国では、普段使われる移動用車両にもぜひ「非常用持ち出しカバン」を用意していただくことをおススメします。

 

ただし、車両に用意すべき「非常用持ち出しカバン」は宿泊先や事務所に用意しているものと一部内容は変わってきます。車両に何時間も何日も立てこもるというシーンはあり得ないからです。むしろ危険が迫ったときにそのカバンだけ持ってできるだけ早く逃げる、そして逃げた先で数時間困らないようにするという目的を念頭に準備しておくとよいでしょう。

 

世界銀行/IMFが実施する危険地支援者向け安全講習テキストに掲載されている車両用「非常時持ち出しカバン」の一例

 

以下に各種安全対策研修のテキストや当HP関係者の経験から車両内の「非常用持ち出しカバン」に入れておくとよいものをリストで示します。ご参考になれば幸いです。

 

1.「カバン」の中に常時入れておくべきもの
・携帯電話と充電器
・パスポートコピー/緊急連絡網
・手回しラジオもしくは電池式ラジオ
・飲食料品
・現金
・懐中電灯と予備の電池
・救急用の簡易医療セット

 

2.安全及び健康維持に必要なもの(用意することが望ましいもの)
・丈夫で歩きやすい靴
・トイレットペーパー/ウェットティッシュ(通常宿泊先や事務所には備え付けがある)
・頑丈な手袋
・毛布
・着替え
・ナイフ等小型の工具
・周辺の地図
・斧やシャベル等
・予備の薬やコンタクトレンズ/眼鏡等
・非常用の呼子笛

 

3.車両内に備えておいたほうがよいもの(「カバン」には入れない)
・スペアタイヤ
・ジャッキ
・三角表示板
・手歯止め
・小型消火器

この項終わり