「魔のスパイラル」を前提に対応マニュアルを
ここ数十年間、日本を襲った自然災害による「魔のスパイラル」で最も甚大な被害が生じたのは福島県の原子力発電所事故ではないでしょうか?東京電力のウェブサイトで公開されている事故の原因や経緯、教訓を参照していると、未曽有の大地震に対しては、設計通り原子炉が停止しこの時点では安全が確保されていたはずでした。
しかしながら大きな津波により原子力発電所敷地が浸水してしまったこともあり、「あって当たり前」の電源がバックアップ用の発電機も含めすべて停止してしまい、緊急事態マニュアルに記載されている「冷やす」「閉じ込める」といった対応が全くできなくなってしまいました。その上、先に爆発してしまった第一号発電所のがれきの影響もあり、その他の発電所の対応がマニュアル通り進まなかったとの記載もあります。
この例で分かる通り、緊急事態対応マニュアルがきちんと整理されていても、本当に緊急事態が発生した際マニュアル通りに対応できる保証はありません。緊急事態対応マニュアルが「魔のスパイラル」を想定せず、電気や水、対応担当者の現場到着といった要素を前提条件としてればなおさらです。
海外事業展開をされている企業・団体の皆さん、現地での緊急事態対応マニュアルをぜひ一度見直してみてください。平常時と同じ前提で対応が記載されていないでしょうか?
電気やガスはもちろんのこと、携帯電話がいつも通り使える前提になっていませんか?
日本人が安全な場所に移動するための車はどこにありますか?
ドライバーさんは出勤できますか?
飲食料品やガソリン等が買えなくなることも考えていますか?
銀行や両替商が営業停止した場合でも乗り切れますか?
「魔のスパイラル」で緊急事態対応マニュアルが機能しなくなるケースは本当に多いのです。焦っている状態でマニュアルにも頼れないとなると、あとはもうパニックしかありません。そうならないためにもマニュアルをしっかりと整え、かつ様々な悪状況を想定しながらマニュアルが機能するか確認する緊急事態対応訓練が必要なのです。
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